刻の流れー78
- カテゴリ:自作小説
- 2023/05/28 01:52:35
その朝東京へ向かう犬飼を見送った要とアキラは環の部屋で三人頭を突き合わせていた。
円座を組んだ真ん中に、ポテチやソーダ缶が乱雑に置かれている。
犬飼の指示は
「ひろみを探して助け出す事」と「奴らの注意を神戸にひきつけておく事」
の2つだ。
犬飼の指示は
「ひろみを探して助け出す事」と「奴らの注意を神戸にひきつけておく事」
の2つだ。
それだけ信頼されているのは嬉しいのだが、指示が漠然としていて、どうすればいいのか解らない。
アキラ一人では荷が重いことも確かだった。
3人寄れば・・・ということで、環も交えて3人で意見を交換する事にしたのだ。
「ひろみさんを探すんは一先ず横においといて、」
事情を一通り説明された環がまずそう言った。
「とりあえず犬飼さんはまだ井上医院におる事にしたらええんちゃうか?」
アキラが首をひねった。
「なんで?」
「昨日の晩、犬飼さんは殴られて病院の中にはいったんやろ?」
環のアイデアが飲み込めないアキラは不承不承頷いて、
「そうやけど・・・」
「ほんなら、ちょっと打ち所が悪うて意識不明でいかれへんか?」
「う~~ん」
アキラは難しい顔をした。
「そんなん中を調べられたら、すぐにばれるやんか。」
「そやけど、ひろみさんも犬飼さんも影も形もあれへんかったら、俺やったら神戸より他を探しにいくで。」
二人のやり取りを聞いていた要が
「井上先生は、ちょっと知り合いなんだ。頼んだら口裏を合わせてくれるかもしれない。」
「ひろみさんを探すんは一先ず横においといて、」
事情を一通り説明された環がまずそう言った。
「とりあえず犬飼さんはまだ井上医院におる事にしたらええんちゃうか?」
アキラが首をひねった。
「なんで?」
「昨日の晩、犬飼さんは殴られて病院の中にはいったんやろ?」
環のアイデアが飲み込めないアキラは不承不承頷いて、
「そうやけど・・・」
「ほんなら、ちょっと打ち所が悪うて意識不明でいかれへんか?」
「う~~ん」
アキラは難しい顔をした。
「そんなん中を調べられたら、すぐにばれるやんか。」
「そやけど、ひろみさんも犬飼さんも影も形もあれへんかったら、俺やったら神戸より他を探しにいくで。」
二人のやり取りを聞いていた要が
「井上先生は、ちょっと知り合いなんだ。頼んだら口裏を合わせてくれるかもしれない。」
と、口を挟んだ。
「ええ?そんなん、聞いてもらえるんか?」
アキラと環が同時に要を見た。
「“多分”だけどな。頼んでみるよ。」
要がニッと笑った。
「うん、ほんなら、頼むわ。」
アキラは謎の多いこの友人に根掘り葉掘り聞くことを諦めた様子だ。いつは信用しても裏切るやつじゃない、そう思えるのだ。
「任せておけ。」
要もアキラの心中を察して頷く。
「でも、そう長くはごまかされへんやろから、その次を考えんとなぁ。」
アキラは話を元に戻す。
「ええ?そんなん、聞いてもらえるんか?」
アキラと環が同時に要を見た。
「“多分”だけどな。頼んでみるよ。」
要がニッと笑った。
「うん、ほんなら、頼むわ。」
アキラは謎の多いこの友人に根掘り葉掘り聞くことを諦めた様子だ。いつは信用しても裏切るやつじゃない、そう思えるのだ。
「任せておけ。」
要もアキラの心中を察して頷く。
「でも、そう長くはごまかされへんやろから、その次を考えんとなぁ。」
アキラは話を元に戻す。
その時、犬飼に要の体型が犬飼に似ていると言われたのを思い出し要を繁々と見た。
「なるほど、要は犬飼さんに感じが似とうなぁ・・・」
そう言われて、環も倉庫で会った犬飼を思い出していた。
「ああ、そういや確かに体型が似とうなあ。」
と、同意しながらも、
「そやけど、顔は全然ちゃうで。」
と意見を言った。
「包帯巻いたらわからへん。」
「替え玉か?」
要が前に乗り出しながら言った。アキラはしばらく顎に手を当てて、考えをまとめている様子だったが、
「こんなん、どうやろ?」
と、自分の計画を話し始めた。
環が持ってきたファンタを一口飲んで、アキラが2人の顔を交互に見た。
「あいつら、絶対今でも病院を張っとうはずやから・・・」
「犬飼さんがまだおる様に見せるために、今日の午後は俺が病院に出たり入ったりする。」
要と環が頷く。
「できたら、要に頭に包帯でも巻いて院内をうろついて欲しいねんけど・・・」
「解った。だけど今夜は仕事があるなあ。」
興津が入院中だし、今夜は確か大事な客が関東から来ると聞いている。
「夜は俺、空いとうし。」
環がすかさず言う。
「お前は体型がちょっとちゃうなあ・・・」
アキラが環の逞しい両腕をみながら語尾を濁した。
「おいおい、俺にも手伝わせろよ。」
環が口を尖らせた。
「いや、いいんじゃないか?犬飼さん、夜は中庭でタバコしたりするんだろ?」
要が割って入った。
「夜なら、どうせ暗くてよく解らないし、包帯とパジャマでごまかせる。」
アキラは、うーんと言ったが、よし、とばかりに頷いて、
「それええかもな。」
と同意した。
「へへへ。」
仲間に入れた事で環は照れ笑いを浮かべた。
「それにしても、お前ら、二人とも髪型があかんな。ばればれや。」
とアキラがずけずけ言う。犬飼の髪は、スポーツ刈りで短い。逆に要たちは二人ともかなり長いのだ。
「それやったら、鬘を何とかするわ。」
と環が笑った。アキラもそれに笑って頷き、計画の続きに戻った
「これを4、5日やって、おおっぴらに退院するねん。」
「その後は・・・」
アキラが顔を上げてにやりとした。
「二手に分かれて神戸を走り回るんや。あいつらびっくりして追いかけてくるで。」
要と環はおお~、っと感嘆の声を上げた。
「なるほど、要は犬飼さんに感じが似とうなぁ・・・」
そう言われて、環も倉庫で会った犬飼を思い出していた。
「ああ、そういや確かに体型が似とうなあ。」
と、同意しながらも、
「そやけど、顔は全然ちゃうで。」
と意見を言った。
「包帯巻いたらわからへん。」
「替え玉か?」
要が前に乗り出しながら言った。アキラはしばらく顎に手を当てて、考えをまとめている様子だったが、
「こんなん、どうやろ?」
と、自分の計画を話し始めた。
環が持ってきたファンタを一口飲んで、アキラが2人の顔を交互に見た。
「あいつら、絶対今でも病院を張っとうはずやから・・・」
「犬飼さんがまだおる様に見せるために、今日の午後は俺が病院に出たり入ったりする。」
要と環が頷く。
「できたら、要に頭に包帯でも巻いて院内をうろついて欲しいねんけど・・・」
「解った。だけど今夜は仕事があるなあ。」
興津が入院中だし、今夜は確か大事な客が関東から来ると聞いている。
「夜は俺、空いとうし。」
環がすかさず言う。
「お前は体型がちょっとちゃうなあ・・・」
アキラが環の逞しい両腕をみながら語尾を濁した。
「おいおい、俺にも手伝わせろよ。」
環が口を尖らせた。
「いや、いいんじゃないか?犬飼さん、夜は中庭でタバコしたりするんだろ?」
要が割って入った。
「夜なら、どうせ暗くてよく解らないし、包帯とパジャマでごまかせる。」
アキラは、うーんと言ったが、よし、とばかりに頷いて、
「それええかもな。」
と同意した。
「へへへ。」
仲間に入れた事で環は照れ笑いを浮かべた。
「それにしても、お前ら、二人とも髪型があかんな。ばればれや。」
とアキラがずけずけ言う。犬飼の髪は、スポーツ刈りで短い。逆に要たちは二人ともかなり長いのだ。
「それやったら、鬘を何とかするわ。」
と環が笑った。アキラもそれに笑って頷き、計画の続きに戻った
「これを4、5日やって、おおっぴらに退院するねん。」
「その後は・・・」
アキラが顔を上げてにやりとした。
「二手に分かれて神戸を走り回るんや。あいつらびっくりして追いかけてくるで。」
要と環はおお~、っと感嘆の声を上げた。
環は単純にスパイ映画そのままにこの神戸を走り回れることに喜んでいる様子だが、要のほうは少々違った。
今まで潜り抜けてきた経験から鼻を利かせて危険因子を嗅ぎ分けようとしている。
向こうがこっちの正体を知らないのは好都合だ。
追っ手はどうやら関東の人間らしいから、カーチェイスになれば土地勘のあるこちらが俄然有利だろう。
拳銃を持っている相手であるのは危険だが、どうしても市街地では使いにくい。
それらを考慮して、街中を車とバイクで動き回ろうとするという計画はうまいと判断した。
アキラは友2人の反応に満足した。
「問題は二手に分かれたら片方が一人になってまうことや。」
アキラが真顔になった。犬飼が必ずペアを組んで動けと言っていたのだ。
「あ、そうだ。」
要が律儀に右手を上げた。
「ひろみさんをさらったのは横浜の奴等じゃないって言ってたよな?」
と、アキラに聞く。
「犬飼さんはちゃうやろってゆうてたな。」
「それなら、ひろみさんの替え玉に、心当たりがあるんだけどな。」
要の提案に、アキラと環は顔を見合わせた。
「まあ、それも任せてくれよ」
二人の返事を待たずに要はにっと笑った。
「まあ、ええや。とにかく行動開始や。頼むで。」
「よっしゃ!」
3人が勢いよく立ち上がりかけたとたん、下から怒鳴り声が聞こえた。
「環~ いつまで油売ってんねん!配達や~。」
「うう・・・わかった、わかった。」
環は大きな声で返事をしながら
「これからって時に、しょうのない親や。」
ぶつぶつ言いながら苦笑する2人の友をおいて部屋を出て行った。
「問題は二手に分かれたら片方が一人になってまうことや。」
アキラが真顔になった。犬飼が必ずペアを組んで動けと言っていたのだ。
「あ、そうだ。」
要が律儀に右手を上げた。
「ひろみさんをさらったのは横浜の奴等じゃないって言ってたよな?」
と、アキラに聞く。
「犬飼さんはちゃうやろってゆうてたな。」
「それなら、ひろみさんの替え玉に、心当たりがあるんだけどな。」
要の提案に、アキラと環は顔を見合わせた。
「まあ、それも任せてくれよ」
二人の返事を待たずに要はにっと笑った。
「まあ、ええや。とにかく行動開始や。頼むで。」
「よっしゃ!」
3人が勢いよく立ち上がりかけたとたん、下から怒鳴り声が聞こえた。
「環~ いつまで油売ってんねん!配達や~。」
「うう・・・わかった、わかった。」
環は大きな声で返事をしながら
「これからって時に、しょうのない親や。」
ぶつぶつ言いながら苦笑する2人の友をおいて部屋を出て行った。
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- mon
- 2023/05/28 16:40
- こんにちは〜お休みでウキウキですが、毎週一瞬で終わります。そんな今日もハッピー♪よい1日を。
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