Nicotto Town


しだれ桜❧


刻の流れー81

犬飼に変装した要と入れ違いに病院の正面玄関から華やかな風が飛び出してきた。
「お待たせ、アキラくん。」
ナースの華里奈である。

白地に大きなヒマワリ柄のサマードレスを着た彼女はびっくりするほど可愛い。
今まで白い看護服姿の彼女しかみた事がないアキラはドキッとした。
「おなかすいちゃった。何にする?」
「えっと、あそこのハンバーガーなんかええんちゃう?」
と、病院からすぐのところにあるバーガーショップを指差した。
普通なら噂になるのを避けて病院近くの店は使いたくないところだが、今は目立とうと言う心理が働いている。
華里奈の異存もなく、アキラたちはチリ~ンと鳴るドアを押してクーラーのよくきいた店に入っていった。
客の回転をよくするためにガンガンに効かして寒いくらいだ。
それでも昼時の店内は混んでいた。
「中は寒いなあ。外のパーラーに座らへん?」
アキラは大げさに言った。
その日もかなり暑く、パーラーに座る物好きの客はいないだろう。
ちらりと外を見ると案の定どの席も空いている。アキラはパーラーなら周りからよく見えて目立つ事この上ないと考えたのだが、それを二人きりになりたい口実だと解釈した華里奈は
「うん。」
と無邪気に頷いた。
それでもせめて木陰になった席を選んで座るとウェイターが水を運んできた。
職場に近いだけあって華里奈はよく食べに来ているらしくそのウェイターとも顔見知りのようだった。
ウェイターはアキラのを面白くない顔でじろじろ見ている。
チーズバーガーとアイスミルクティーを頼んだ華里奈が
「アキラ君は?」
と聞く。
水を飲んでいたアキラは
「がぼごぼごばぼご。。。」
コップに口をつけたまま喋ったので華里奈が吹き出した。
「アキラ君てば、いくら東京が長いからゆうて、それじゃ通じへんよ。」
「俺、チーズバーガーとアイスコーヒー。」
アキラは照れ隠しに咳払いをして言い直した。
ウェイターが机を離れるのを目で追いながら改めて華里奈の顔に目をやる。
「休憩、遅いんですね。何時までなんですか?」
華里奈に東京が長いと言われたのに釣られてついついカッコをつけて標準語で話す。
「一時間。」
それから急に声を落として
「どうしたん?急に標準語になって。」
と聞く。
「あ、いや・・・」
アキラが返答に詰まるっていると
「失礼します。」
ウェイターがフォークの入ったバスケットと共に飲み物を持ってきた。
アイスコーヒーを少々乱暴にアキラの前に置いていく。
「・・・?」
アキラがウェイターの態度に不思議な顔をすると華里奈がまた声をひそめた
「さっきのウェイターね、私が男の子と来たら、いつもああやねん。」
と嬉しそうに言う。
「私に気があるのかもね~。」
ウェイターの気持ちを知っていて楽しんでいるらしい。
「あはは・・・」
アキラは困ったように笑った。
しかし華里奈は全く気にしない様子で
「ねえねえ、昨日から病院じゃ犬飼さんの事で持ち切りやねんよ。」
と、話題を変えてきた。
「婦長に聞いてもなんも教えてくれへんし、ねえ、一体何が起こっとうのん?」
いきなりの質問にアキラはびくっとした。
もちろん本当のことを華里奈に言えるわけはない。
アキラは目を道路に泳がせながら適当な作り話を考えた。

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2023/06/07 23:36
ここから(o*。_。)oペコッ
まだ水曜日・・そして土曜日は仕事がんばれないかも?
やらなきゃだけどね
保育参観なのでほどほどにがんばる~




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