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月と赤い糸 第四章

第四章

彼との日常が始まった私はなるべく話せる時間を取る様にしていた。
話せると言っても文字の世界なだけなのだが。
彼は私に沢山の愛情や秘密や悩みも打ち明けてくれた。
彼の気持ちは彼にしか分からない事だが、私の事を本当に愛してはいなかったのだと思う。
出逢ってから3ヶ月が過ぎた頃から彼の異変に私は気付き始めていた。
唐突に毎日の様に交わされていた「愛してる」が途切れたのだ。
私は「あぁ、また…」と落ち込むようになり、何故愛してるを伝えなくなったのか、理由を聞くことにしてみたのだ。
彼は最初、本当の事を言おうか戸惑っているようだった。
私は、何を言われたとしても受け止める覚悟で彼に「私の愛を疑わないで」と、伝え
彼も本当の事を少しづつ話してくれた。
簡単な話だ、彼のお母さんに反対されている、という内容だった。
それは勿論私の頭の隅にあった簡単に予想出来る展開だった。
私はそれよりも、私との関係を「秘め事」にしていてくれていなかった事が何よりも心を傷めた。
それでも尚、「あなたの心が知りたい」と私は必死だったのだが、
彼はいつからか私を遠ざける様な発言が多くなり、「自分の気持ちを知る必要はない」と
悲しい言葉ばかりを文字にする様になった。
私は、とてつもない孤独感に苛まれる日々を送る事になるのだが、
彼は何故か、土曜日か日曜日に「調子はどう?」と声を掛けてくれていた。
私は常に強がり、「元気にしてるよ、あなたは?」と簡潔な返答だけをしていた。
私の孤独を埋めてくれていた「唯一の人」は私に「孤独を与える人」になっていたのだ。
正直、彼からの連絡があると心がとても温かくなる感覚だった。
そんな日々が続いていた頃、彼は私ではない「誰か」にメッセージを送っている様だった。
メッセージが来たかと思えばすぐに消されてしまったからである。
私に間違えて送ってしまった様で、私は心が砕ける音に怯えた。
物凄い恐怖感や薄っぺらいグラスを落とした時にガラスが粉々に砕ける様な、そんな感覚。
私は冷静に「他の方に送ったのかな?笑」とメッセージし、彼は「ふふ」と返した。
悪びれる素振りもなく、ただ笑ったのだ。
私はそれから、眠れなくなり、リスカまで始まってしまった日々を送り
病院へと薬を貰いに行く頃には焦燥しきっていた。
私は兎に角「眠れる薬を下さい」とだけ伝え、先生は憔悴している私を見て承諾してくれた。
リスカは兎に角隠した。
お洒落な様にアームカバーをして。
彼からの連絡は決まって、土曜日か日曜に「調子はどう?」と続いていたが、
私は色々と話してみる事にした。
その時にどんな言葉達を交わしていたのか覚えてはいないのだが、
少しばかり強くなった薬で眠った朝に私は気付いた事があり、彼にメッセージを送っていた。
「あなたは私と言う人間に恋をしたんじゃない、私の年齢に失望したのよ」と。
彼からの連絡は朝方に来ていた。
「sorry」と。
それからも彼との連絡はちょこちょこ続き、彼はいつの頃だったか、
自分は日本人と結婚したいと笑いながら言っていたのを覚えている。
私はその時に、察したのだ。
「日本人である私は彼の理想の恋人ごっこに利用された」のだと。
彼から離れなければ私の心はボロボロになる、そう思った瞬間だった。
月日はとっくに秋の終わりを告げようとしていた。
私はどれだけの月日が経とうとも月を見上げて煙草を辞める気はなかった。

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2023/07/29 16:38
ああ なんて切ないのでしょう。
ここまで一気に読んで涙してしまいました。
わかるんですよね。女性って。
sorry と 言ってくれただけ まだ良かったかも
と 思ってしまいました。
ここで ハハハと笑われてしまったら全てに失望してしまいそう。



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