刻の流れー83
- カテゴリ:自作小説
- 2023/06/12 19:46:28
昨夜ぴかぴかに磨き上げ、新車同然で横浜の客人たちに渡した黒のクラウンの変わり果てた姿に原田は眉間にしわを寄せ本田を睨みつけた。
右後ろのタイヤハウスから後ろのバンパーまでどう運転したらこんな傷が付くのか、引っかき傷にブロック塀に当てたようなヘコミが何箇所かある。
原田の口からため息が漏れる。
車の前にしゃがみこんでヘコミを一つ一つ指でなぞった。
「確かに貸すとは言いましたが、これが横浜の礼儀ですかね?」
と皮肉を言う。
「確かに貸すとは言いましたが、これが横浜の礼儀ですかね?」
と皮肉を言う。
本田は割った花瓶を見つけられたいたずら坊主のように視線をそらせた。
「ふん!」
原田は力をこめてヘコミを押し出し、へし曲がったバンパーはパイプを使って力任せに伸ばす。
「バカ野郎が・・・」
パイプと木槌をカラ~ンと投げ捨てると、今度はしゃがみこんで擦り傷をタッチアップで補修する。
「ふん!」
原田は力をこめてヘコミを押し出し、へし曲がったバンパーはパイプを使って力任せに伸ばす。
「バカ野郎が・・・」
パイプと木槌をカラ~ンと投げ捨てると、今度はしゃがみこんで擦り傷をタッチアップで補修する。
随分と乱暴に作業をしているように見えるのに、原田は本田の目の前で瞬く間にテールの凹みを目立たなくしてしまった。
その手元を感心してちらちらと眺めながら本田は神戸の市街地図を広げていた。
その手元を感心してちらちらと眺めながら本田は神戸の市街地図を広げていた。
神戸は繁華街はともかく裏に入ると細い道と一方通行がやたらと多い。
クラウンのような大型車で走り回るのは苦しいと考えていた。
「バイクがいるな・・・」
とつぶやく。
「なんだと?」
原田が聞きとがめて目を上げた。
「モトクロス・バイクを2台手配してくれないか?」
それなら自動車よりも小回りが利き、機動力に富んでいる。
「バイクがいるな・・・」
とつぶやく。
「なんだと?」
原田が聞きとがめて目を上げた。
「モトクロス・バイクを2台手配してくれないか?」
それなら自動車よりも小回りが利き、機動力に富んでいる。
しかもモトクロス上級者の川崎と鈴木なら階段くらいは平気で上り下りしてしまうだろう。
ターゲットが車だろうが、足であろうがこれなら問題なく追える。
最初から神戸の道路事情を計算尽くで本部の豊田隊長はこの二人を刺客に加えたのかもしれない。
そんな本田の内心にはお構いなく原田が呆れたようにため息をついた
「クラウンでは飽き足らず今度はバイクか?」
怒鳴り散らしたいのは山々だが、横浜からの客人たちには全面的に協力するようにという梶からの命令がある。それでもせめてもう二言三言皮肉を言ってやろうと口を開いたその時、外線が鳴った。原田が出る。
「あんたにだ。」
原田から受話器を受け取り相手の言葉に耳を傾けていた本田の目がきらりと光った。
「よし、鈴木は引き続き駐車場を見張れ。川崎は病室を特定しろ。」
と指示を出し、電話を切った。
「探し物が見つかったようだな?」
原田が無表情に聞く。
「ああ、バイクがすぐに入用になりそうだ。頼めるか?」
原田は少し考えていたが、
「仕方ないな。」
と答える。
「それと、バイクとクラウンに無線をつけてもらいたい。ここで、できるか?」
と、本田が付け足す。
そんな本田の内心にはお構いなく原田が呆れたようにため息をついた
「クラウンでは飽き足らず今度はバイクか?」
怒鳴り散らしたいのは山々だが、横浜からの客人たちには全面的に協力するようにという梶からの命令がある。それでもせめてもう二言三言皮肉を言ってやろうと口を開いたその時、外線が鳴った。原田が出る。
「あんたにだ。」
原田から受話器を受け取り相手の言葉に耳を傾けていた本田の目がきらりと光った。
「よし、鈴木は引き続き駐車場を見張れ。川崎は病室を特定しろ。」
と指示を出し、電話を切った。
「探し物が見つかったようだな?」
原田が無表情に聞く。
「ああ、バイクがすぐに入用になりそうだ。頼めるか?」
原田は少し考えていたが、
「仕方ないな。」
と答える。
「それと、バイクとクラウンに無線をつけてもらいたい。ここで、できるか?」
と、本田が付け足す。
管制車として無線を装備したクラウンをそのまま使いたいというのだ。
もちろん無線など原田には造作もない。
「何とかしよう。」
クラウンをすんででお釈迦にするところだった男に対して、原田は非常に寛大な心をもって要望のバイクを2台を超特急で手配してやった。
もちろん無線など原田には造作もない。
「何とかしよう。」
クラウンをすんででお釈迦にするところだった男に対して、原田は非常に寛大な心をもって要望のバイクを2台を超特急で手配してやった。
その上で希望通りにクラウンに無線機を取り付ける。
バイクの納車を確かめ、鈴木たちと見張りを交代するために本田が病院へ行っている間に、二台のバイクにトランスミッターの電源を差し込める端子をバッテリーから引張りキーボックスのそばに固定した。
小一時間して、バイクの試運転の為にガレージに来た鈴木たちに原田はバイクの鍵とヘルメットを2組渡し、トランスミッターの使い方を説明した。
小一時間して、バイクの試運転の為にガレージに来た鈴木たちに原田はバイクの鍵とヘルメットを2組渡し、トランスミッターの使い方を説明した。
ヘルメットはインナーを少し削ってヘッドセットが組み入れてある。
これなら両手があくので都合がいいと、鈴木たちは原田に頭を下げた。
そのまま真新しいバイクにまたがりガレージを後にする。
その午後、時間の許す限り実際に三宮を中心に市内を走って神戸の地図とめぼしいランドマークを頭に叩き込むためだ。
こういった実践には長けた男達なのだ。
日が翳りだした午後6時、鈴木たちが井上医院前にあるビルのガレージにバイクを静かに入れた。
日が翳りだした午後6時、鈴木たちが井上医院前にあるビルのガレージにバイクを静かに入れた。
3階の部屋に戻ると、本田がタバコをくわえたまま2階の病室に双眼鏡を向けている。
「ご苦労。」
本田が背中で部下をねぎらった。
「30分圏内はほぼマスターしてきました。」
川崎が言う。
「入院している間はどうしても手を出しにくい。明日からも交代で流してこい。」
本田はそう言いながら、双眼鏡を川崎に渡した。
「犬飼は今は部屋にいるようだ。」
病室内は楠の立派な枝が邪魔をしてはっきり見えないが、人影が動くのが枝の間から見え隠れする。
「若い方はどうやらお楽しみのようだ。」
いい気なもんだと独り言を言い、部下達に監視を引き継ぐと、本田はソファーに横になった。
「ご苦労。」
本田が背中で部下をねぎらった。
「30分圏内はほぼマスターしてきました。」
川崎が言う。
「入院している間はどうしても手を出しにくい。明日からも交代で流してこい。」
本田はそう言いながら、双眼鏡を川崎に渡した。
「犬飼は今は部屋にいるようだ。」
病室内は楠の立派な枝が邪魔をしてはっきり見えないが、人影が動くのが枝の間から見え隠れする。
「若い方はどうやらお楽しみのようだ。」
いい気なもんだと独り言を言い、部下達に監視を引き継ぐと、本田はソファーに横になった。
いっつも有難うございます(⋈◍>◡<◍)。✧♡
悪阻・・娘の時は・・7キロも落ちちゃって・・
長~く続いて;;辛かったけど~
今回は・・早く悪阻終わって・・良かった