ゲヒルンの迷宮
- カテゴリ:日記
- 2023/06/15 14:22:04
ゲヒルンの迷宮
1
暗い部屋で目が覚めた。
暗い部屋だ。
薄暗いが部屋は見渡せる。そして、光源がわからない。
病院にあるようなベットに寝ていたようだが自分がいつからここにいるのかわからない。
だいたいここは何処だ?
4畳半しかないような部屋はベットの他は扉が一つあった。
ここにいても仕方がないので扉を開く。
目の前は広い回廊だった。
ただ、上下左右前後がよくわからない。
地面はあり下に足はついてるが広間を中心に前後左右上下に廊下が広がり人々が徘徊している。
定期的に廊下の穴が見える。
上の広間にあるテーブルで談話する男女。
ここの大きな広間には中心に黒い、いや暗いよく見えない玉があり
付近にいた老人に「ここは何処ですか?」と尋ねた。
「何処だろうねぇ。迷宮ではあるんだけどねぇ」のんきに構えた老人は相手にしてもらちがあかない。
「あなたは誰ですか?」
「名前は忘れたよ、あんたは、名前覚えているかい?」
「僕は城島俊之」
2
http://www.fukushima-umanushi.jp/column/body/body001.html
パソコンかスマホでみれるはず
複雑なのか。。。
少し怖い部分もあり
でも黒い穴からは離れるように走る…
待っていてくれる人がいるって
どっちの世界でもいいなぁと思う…
子供達は二人とも男の子なのね…
昔は子供は女の子がいいなって思ってたっけな、懐かしい。
11
目が覚めるとそこは病室だった。
親父がいるし2人の子供がいた。
俊之「父さん、直樹、敏典」
俊典「お前。心配させやがって」
俊之「雫に会ってきたよ。僕は本当に死にかけたんだな」
直樹「母さん、どうだった?僕も会いたい」
俊之「会うのは駄目だ。しかし、日本に帰れば雫の足跡をたどる旅にでもいこうか?」
雫が死神として現れたとはさすがに言えない。
でも、最終的に助けてくれたのも雫なのだ。
僕は雫のためにも2人の息子を育て上げなければ。
医師がゲヒルンという発音の単語を言っているのを聞いてゲヒルンとは何かを聞く。
脳のことだと答えられた。脳死の境をさ迷ったあの場所はゲヒルンの迷宮と記憶に留めることにした。
了
クーゲルから離れるにつれて地面が明るさを増した。
どんどん明るさが増す。
雫が言ったように決して振り返らず走り続けた。
11
9
雫は黒服の魔術師の姿で現れた。
雫「ねえ、覚えてる?私達がであった時のこと」
俊之「ああ、覚えているよ。新入社員として現れた君はドジで間抜けで・・・でも明るい可愛い子だった。そんな君を僕はナンパした」
雫「あなたは子供が出来ると関心が子供にばかり向くようになった」
俊之「・・・子供に嫉妬していたのか。気づけなかった僕が悪いよ」
雫「最後にもう一度好きと言って」
俊之「好きだったし、これからも大好きだよ。でも子供がいるんだ。君との子供だ」
雫「クーゲルから離れるようにこのまま走り続けて。決して振り向かないで。目が覚めるまで走り続けて」
10
8
「お父さんは治るの?」
俊典は長男の直樹の問いかけに返す言葉はない。
次男の敏典は物事を判断できる年齢ではない。
ガラスの窓の向こうには脳外科の先生がオペをしている部屋だ。
手術によっては家族が近くにいた方が成功しやすいらしいが先生の邪魔になるからと別室が用意された。声は届くらしく看護師は通訳を通じて、
「患者さんに呼びかけて下さい」と言うのだが涙が先に出て上手く話せない。
直樹はただ「お父さん頑張って~」と呼びかける。
俊典は看護師に「この手術はどういうものですか?」と聞く。
通訳を通して「頭部に溜まった血を抜いているのです」
俊典「そうすれば脳細胞が再生するのですか?」
通訳「再生はしません。神経細胞は一度作られると細胞分裂しない細胞です。
・・・グリア細胞をご存じですか?」
俊典「知りません」
通訳「グリア細胞は神経細胞をその場所に固定する細胞です。
また、神経細胞を守る細胞でもあります。
出血の血から神経細胞を守る為にグリア細胞は血を取り込んでいます。
長期間このままであればグリア細胞も死んで神経細胞も死にます。
しかし、間に合えば・・・神経細胞さえ生きていれば・・・」
俊典「まだ、息子は助かる可能性もあるのですか?」
俊典は希望が見えた。結婚相手の雫も先立たれ俊之まで先立たれればアゴ男の政治家に年金を食い潰されているのに高齢者としての収入で孫2人の面倒を見なければならないところだ。
俊典は心の底から叫んだ。俊之生きろ。なんとしても生きろ。
9
7
通路には左右に扉があるが上部にも左右に扉がある。廊下は通路の上にも歩けるのだ。
10分も歩くとライアーおじさんの部屋らしき場所に着いた。
表札が付いている。ライアー・シュリックと書かれてある。
ノックする。重量ある輪っかを下の金具に打ち付ける古い道具だ。
「誰じゃ?」
俊之「城島俊之と言います。生きていた世界に帰りたく手がかりを探しています。助けて下さい」
ライアー「帰る方法などわしもわからんよ」
俊之「クーゲルに触れたら帰れませんか?」
ライアー「死神はあの黒い玉のクーゲルからやってくると言うのにか?」
俊之「何故それがわかるんですか?」
ライアー「光が地面から出てあの黒い玉に吸い込まれている。あれは死者の世界に繋がっている」
俊之「何故地面から光が出ていると思うんです?」
ライアー「この世界に光源があるか?ここの世界は何かの光の反射で見えているわけではない。しかし、見えるくらいには判別できるのだ。
まるで、・・・あの黒い玉が光源だったとして地面に光りをもたらす光景を『巻き戻した』かのように」
ライアーはぶつぶつと病的なまでに独り言を言うようになり俊之の言葉にもわからないくらいだ。
俊之は部屋を立ち去った。
8
6
黒服の魔術師でも着るような服を着た女性。雫だ。
雫「こっちに来て。ねえ、こちらで一緒に暮らしましょう?
こちらの世界では歳をとらないの。好きな姿にもなれる。
ただ、寂しさは残るのよ。・・・一緒にこちらの世界で暮らしたいの」
俊之「子供はまだ幼いんだ。僕は向こうに帰る。生きていた世界に帰るよ」
雫は唇を噛むと消えていった。
7
5
何を調べたらいいかすらわからない。
とにかくなんでもいいので情報集めだ。
俊之「ライアーおじさんを知らない?」
「さあ、知らないなあ。」「知らないよ」「・・・知らんよ」
「さあね」「どうだろうね」「どうでもいいじゃん」
「この先の通路の先の部屋にいるよ」
・・・やっと手がかりを見つけた。
しかし、ここの人々は皆が皆精気がない。
ここを歩き回って少しは地形がわかった。
地面は平地なのに全体はクーゲルを中心に球形をしている。
そこから各所に通路が延びてまるでこれではトゲ付き柿かウニのようだ。
6
4
城島俊典は息子の姿を見て愕然とする。
旅行中にバイク事故を起こし頭部を強く損傷したらしく、よく言う植物人間状態と化した。
頭部に巻かれた包帯と生命維持装置に繋がられている他はまるで寝ているようだ。
俊典「息子は俊之はもとの状態に戻るんですか?」
医師のアルバンは小太りな初老な感じだが顔は険しく通訳を通して
「脳内出血をしていました。回復の見込みは難しいでしょう」と言う。
俊典「脳死ですか?今にも目覚めそうな顔色なのに?」
アルバン「できる限りのことはしますが・・・生命維持を外す覚悟はしておいて下さい」
5
3
壁を登ることを覚えた。
壁に片足を付けると引力移動する感覚がある。
廊下は壁から伸びるように配置されていて天井には広場で会話する男女がいる。
ここから出る手がかりを見つけなくては。
男女に「ここに来たきっかけを覚えてる?」と聞いた。
「死んだのよ。ここにいる人はみんなそうじゃない?」
・・・死んだ?僕が?
記憶の最後にある出来事を思い出そうとする。
たしか、バイクで路上を走っていた。
ならば交通事故か?
よくわからない。
俊之「あそこにある黒い玉は何だ?」
「クーゲルよ。そういえばあそこに光源があるのではなく部屋中のわずかな光源があそこに吸収されるとかライアーおじさんは言っていたけどどうかしら?」
俊之「ライアーおじさん?」
「昔は科学者だったとかいうけどどうかしら?」
俊之(あれに触れればどうなるのかな?)
4
2
黒服の魔術師でも着るような服を着た女性が現れた。
知ってる顔だ。城島雫。僕の初恋の人。僕より早く死んだ妻。
雫「俊之。まだこっちに来ないの?」
俊之「こっちとは何処だ?」
雫「死後の世界よ、死んだらみんなこっちに来るのよ。私はずっと待っていたの。あなたが来るのを」
俊之「僕は帰らなければならない。まだ子供は小さい。君との子供だ。少なくとも子供が独り立ちするまではそっちに行けない」
雫「私は寂しいの」
俊之「子供が大事だ。そっちには行けない」
雫は唇を噛むと消えていった。
俊之「今のはなんだ?」
「今のとは?」
俊之「黒服の女性が現れた」
「それはトートだな」
俊之「エジプト神話のあれか?」
「違う。ドイツ語でいう死神をトートと言うんだ。この世界ではよくあることだ」
俊之「死神か、・・・ボクは何故ここにいるんだ?」
3