刻の流れー94
- カテゴリ:自作小説
- 2023/07/11 23:32:37
目的のコインロッカーは案外たやすく見つける事が出来た。
犬飼はそれでも、すぐにはロッカーへは近づかず、周辺をぐるぐる歩き回った。
「罠かも知れない。」
その疑いが常に犬飼を慎重にさせるのだ。
神戸から新幹線でその日の昼過ぎ東京に付いてからと言うもの、おっしょはんのところにコンタクトを取ってきた謎の男に振り回されている犬飼だった。
「罠かも知れない。」
その疑いが常に犬飼を慎重にさせるのだ。
神戸から新幹線でその日の昼過ぎ東京に付いてからと言うもの、おっしょはんのところにコンタクトを取ってきた謎の男に振り回されている犬飼だった。
連絡係であるおっしょはんの電話番号はひろみから聞きだしたのだろうが、なぜひろみがそんな事をしたのか納得できない。
ひろみは、そいつを敵ではないと判断したのだろうか?そもそも、一体どんな情報を買えと言うのだ?
東京の街をタクシーで行ったり来たりさせられ、時間はそろそろ3時を回る。
東京の街をタクシーで行ったり来たりさせられ、時間はそろそろ3時を回る。
犬飼は周りを見渡した。まだラッシュアワーではないが、駅にはそれなりに人も多く、売店も賑っている。
ごく普通の駅の風景だ。犬飼はおもむろにロッカーに歩み寄った。
ポケットから鍵を取り出す。100円で借りられる小さなロッカーは表から見る限り何の仕掛けもないようだ。
それ以上は無茶な調べ方もできず、犬飼は鍵穴にキーを挿しゆっくりと回した。
引っかかりも無くコインロッカーのロックはカチッと外れた。
引っかかりも無くコインロッカーのロックはカチッと外れた。
何も起こらない。犬飼は、扉に手を掛けて1センチほどゆっくりと開いて中を見たがコード類は何も無い。
隙間をさらに広げて中を覗いても扉にはなにも仕掛けはない。
「ふうーーーーっ」
肩透かしを食らったようだ。
「ふうーーーーっ」
肩透かしを食らったようだ。
額ににじみ出た汗を拭きながら、犬飼はため息に似た息を漏らして肺を空にした。
ロッカーの中の空気はひんやりしていた。
ロッカーの中の空気はひんやりしていた。
その中に茶色い封筒がひっそりと置かれていた。
かなりの厚みがある。
そっと持ち上げると封筒は重みでしなった。
犬飼は封筒を光にかざしたり、外から撫でたりしていたがどうも、中身は紙だけのようだ。
「とにかく、編集長と一緒にご開帳といこうかな・・・」
もしも、誰かがここで張っているなら、タクシーを使うのはいただけない。
「とにかく、編集長と一緒にご開帳といこうかな・・・」
もしも、誰かがここで張っているなら、タクシーを使うのはいただけない。
犬飼は適当な区間の切符を買い電車に乗った。
無事取り出した封筒を封も切らずに小脇に抱えたまま犬飼は編集長の待つ出版社のドアを開けた。
「オウ、待っていたぞ。」
編集長は扇子で扇ぎながら犬飼を手招きした。
相変わらず記者や編集者達はみな出払っていて、閑散とした事務所を、犬飼は一番奥のデスクに向かって大股に歩いていった。
「結構暑がりなんですね。」
「ああ、若いとエネルギーが余って仕方がない」
「そうやっとうと、悪徳商人丸出しやなあ」
「雇い主様に対して随分な言い様やな。おまえ、いつから関西人に戻ったんや?」
「編集長も人の事言えませんね。」
「移っちまったな。ははは・・・」
犬飼は、笑い顔を納めて、神戸でひろみを拉致したと考えられるやつらの一人から情報を買って欲しいとコンタクトがあったことを編集長に話した。
「で、これがその封筒です。」
小脇に抱えていた封筒を編集長の机の上に置く。
「まさか爆発はせんだろうな。トリニティの二の舞はごめんだからな。」
編集長は封筒を取り上げると、振ってみたり、光に翳したりして確かめている。
「ははは、大丈夫ですよ。」
封筒の中は透けては見えないが、手触りで、中に入っているのが書類だけだという事は解っていた。
無事取り出した封筒を封も切らずに小脇に抱えたまま犬飼は編集長の待つ出版社のドアを開けた。
「オウ、待っていたぞ。」
編集長は扇子で扇ぎながら犬飼を手招きした。
相変わらず記者や編集者達はみな出払っていて、閑散とした事務所を、犬飼は一番奥のデスクに向かって大股に歩いていった。
「結構暑がりなんですね。」
「ああ、若いとエネルギーが余って仕方がない」
「そうやっとうと、悪徳商人丸出しやなあ」
「雇い主様に対して随分な言い様やな。おまえ、いつから関西人に戻ったんや?」
「編集長も人の事言えませんね。」
「移っちまったな。ははは・・・」
犬飼は、笑い顔を納めて、神戸でひろみを拉致したと考えられるやつらの一人から情報を買って欲しいとコンタクトがあったことを編集長に話した。
「で、これがその封筒です。」
小脇に抱えていた封筒を編集長の机の上に置く。
「まさか爆発はせんだろうな。トリニティの二の舞はごめんだからな。」
編集長は封筒を取り上げると、振ってみたり、光に翳したりして確かめている。
「ははは、大丈夫ですよ。」
封筒の中は透けては見えないが、手触りで、中に入っているのが書類だけだという事は解っていた。
編集長も、納得したらしく、鋏を取り出し封を切った。封筒の中からはA4の紙が数十枚と大きな紙を折りたたんだものが出てきた。
「どれどれ、こりゃでかい紙だなあ・・・」
ぶつぶつ言いながら大判の紙を広げていた編集長が
「う・・・これは・・・」
と、うなる。後ろから覗き込んでいた犬飼も言葉に詰まった。
大判の紙は建物の見取り図だった。間取りから、監視カメラの位置まで細かく書かれている。犬飼はあわてて編集長が脇に置いたA4の書類の方に手を伸ばした。
情報がお気に召すことと信じております。本日午後5時、当方よりお値段に付いて連絡させていただきます。
犬飼 明様
同封: 紐育倶楽部敷地内見取り図 一式、
紐育倶楽部 概要
顧客名簿
一番上の紙にタイプでそう打たれていた。
「どれどれ、こりゃでかい紙だなあ・・・」
ぶつぶつ言いながら大判の紙を広げていた編集長が
「う・・・これは・・・」
と、うなる。後ろから覗き込んでいた犬飼も言葉に詰まった。
大判の紙は建物の見取り図だった。間取りから、監視カメラの位置まで細かく書かれている。犬飼はあわてて編集長が脇に置いたA4の書類の方に手を伸ばした。
情報がお気に召すことと信じております。本日午後5時、当方よりお値段に付いて連絡させていただきます。
犬飼 明様
同封: 紐育倶楽部敷地内見取り図 一式、
紐育倶楽部 概要
顧客名簿
一番上の紙にタイプでそう打たれていた。
紙を繰ってみると、倶楽部の所在地に始まり、営業時間、倶楽部の簡単な歴史、支配人以下、責任者の指名と顔写真のページが数枚あり、最後に顧客の氏名と素性がリストされたページが延々と続いている。
あまりにもストレートに情報が手に入ってきて、犬飼と編集長はあっけに取られ顔を見合わせた。
あまりにもストレートに情報が手に入ってきて、犬飼と編集長はあっけに取られ顔を見合わせた。
住所はこの間アキラが尾行した時に判明した場所と一致する。
編集長が気付いたように引き出しからノートを出してきた。
「ちょっと、それをみせてみろ!」
犬飼の手から顧客名簿を奪いとり、しばらく内容を見比べていたが、
「・・・こりゃ、本物だな。」
と、いって、椅子の背もたれにもたれかけた。
「お前が神戸にいる間に、その倶楽部に通っていそうな人物を俺なりに裏から調べてみた。」
「これが、そのリストだ。」
編集長はそういいながら、ノートを犬飼に投げてよこした。
「ちょっと、それをみせてみろ!」
犬飼の手から顧客名簿を奪いとり、しばらく内容を見比べていたが、
「・・・こりゃ、本物だな。」
と、いって、椅子の背もたれにもたれかけた。
「お前が神戸にいる間に、その倶楽部に通っていそうな人物を俺なりに裏から調べてみた。」
「これが、そのリストだ。」
編集長はそういいながら、ノートを犬飼に投げてよこした。
ノートには10ページほどに亘って個人名とその人物の地位が細々と書かれていた。
「ほぉ、あんたにしたら、行動的だ。」
憎まれ口をたたきながら、犬飼もノートと謎の封筒のリストを見比べる。
「ほぉ、あんたにしたら、行動的だ。」
憎まれ口をたたきながら、犬飼もノートと謎の封筒のリストを見比べる。
編集長のノートには全部で50人ほどの著名人の名が書き込まれているが、その名前は一つ残らず、謎の封筒のリストにも載っているのだ。
しかもそれにくわえて、リストにはその5倍からの名前がある。
「なるほど、ガセではなさそうですね。」
「それでも、裏は取るんだろうな?」
我に返ったように編集長が念を押した。
「もちろんです。」
いくら本物らしくても、正体不明の電話の男から手に入れた情報だ。
「なるほど、ガセではなさそうですね。」
「それでも、裏は取るんだろうな?」
我に返ったように編集長が念を押した。
「もちろんです。」
いくら本物らしくても、正体不明の電話の男から手に入れた情報だ。
直に会ったわけでも話したわけでも無い男の言う事を鵜呑みにはできない。
「早速今晩横浜へ行ってきます。」
「今から行くのか?まだ明るいぞ。」
編集長が窓の外を見た。
「5時ごろに連絡してくるらしいですからね。そっちが先だ。」
「ああ、そうだな。」
編集長は納得して、
「じゃあ俺はこのリストに載ってる新人物をピックアップしておこう。」
と言った。
「それと・・・」
犬飼が編集長の顔を覗き込む。
「・・・追加をお願いしたいんですがね・・・」
右手の人差し指と親指で円を作ってみせた。
「なんだと!」
編集長は一瞬眉間にしわを寄せたが、諦めたように、
「わかった、明日の朝一番に振り込んどくよ。」
と、手を振った。
「その代わり、頼んだぞ!」
「まかせておいてください!」
そう言い残して犬飼は編集社を後にした。
「早速今晩横浜へ行ってきます。」
「今から行くのか?まだ明るいぞ。」
編集長が窓の外を見た。
「5時ごろに連絡してくるらしいですからね。そっちが先だ。」
「ああ、そうだな。」
編集長は納得して、
「じゃあ俺はこのリストに載ってる新人物をピックアップしておこう。」
と言った。
「それと・・・」
犬飼が編集長の顔を覗き込む。
「・・・追加をお願いしたいんですがね・・・」
右手の人差し指と親指で円を作ってみせた。
「なんだと!」
編集長は一瞬眉間にしわを寄せたが、諦めたように、
「わかった、明日の朝一番に振り込んどくよ。」
と、手を振った。
「その代わり、頼んだぞ!」
「まかせておいてください!」
そう言い残して犬飼は編集社を後にした。
どうなっていくのか 予測不能
ひろみさんは無事なようで ちょっと安心
さて 買い物帰りの 道で 家の解体をしていました
そこに カワサキ BEETと書いたバイクが止まっていました
大きくて キラキラして カッコ良かったです