刻の流れー97
- カテゴリ:自作小説
- 2023/07/16 21:24:33
セーフハウスで犬飼は紐育倶楽部の平面図と横浜の地図を広げていた。
棚のラジオからニュースが聞こえる。
「こうも段取りまで取られてるってのがどうも気に入らないな・・・」
一人ゴチながらも食い入るように図面を見ている。
「こうも段取りまで取られてるってのがどうも気に入らないな・・・」
一人ゴチながらも食い入るように図面を見ている。
そこにはご丁寧に侵入経路まで赤線で引いて書き込んであった。
定規を当てた細い線の引き方、几帳面な図面の折り方が、どうも女を感じさせる。
電話の内容から『3110』と名乗る男は現在神戸にいるらしいが、図面や資料をロッカーに入れたり、東京の様子を『3110』に知らせている人物がこちらにいるはずだ。
「それは女なのか?」
「そもそも『3110』と倶楽部の関係は・・・」
犬飼は、ふとさっきの電話での要求を思い出した。
「倶楽部支配人の執務室の壁に掛けられた絵を知っていると言う事は、内部の人間としか考えられない・・・」
支配人の部屋へ自由に出入りし、図面や顧客リストをいとも簡単に手に入れることの出来る立場の女・・・
「・・・秘書か・・・」
犬飼はつぶやいた。もしそうならば、『3110』は秘書と好を通じている男かそれとも上司・・・。
「それは女なのか?」
「そもそも『3110』と倶楽部の関係は・・・」
犬飼は、ふとさっきの電話での要求を思い出した。
「倶楽部支配人の執務室の壁に掛けられた絵を知っていると言う事は、内部の人間としか考えられない・・・」
支配人の部屋へ自由に出入りし、図面や顧客リストをいとも簡単に手に入れることの出来る立場の女・・・
「・・・秘書か・・・」
犬飼はつぶやいた。もしそうならば、『3110』は秘書と好を通じている男かそれとも上司・・・。
もしそいつが倶楽部内の幹部なら現支配人に取って代わろうと考えている奴か?
疑問は次々に湧いてくる。その度に地図を追っている指がとまるのだ。
「直感を信じろ。」
犬飼は頭を振って自分に言い聞かせた。
疑問は次々に湧いてくる。その度に地図を追っている指がとまるのだ。
「直感を信じろ。」
犬飼は頭を振って自分に言い聞かせた。
直感は、今のところはこの情報に従えと言っているのだ。
犬飼は邪念を無視することに決めた。
「ありがたく使わせてもらおう。」
そう独り言を言うと図面と地図をたたんだ。時計を見ると、7時だ。
「そろそろ倶楽部のパーティーが始まる時間だ・・・」
倶楽部の概要には営業内容とスケジュールが記されていた。
「ありがたく使わせてもらおう。」
そう独り言を言うと図面と地図をたたんだ。時計を見ると、7時だ。
「そろそろ倶楽部のパーティーが始まる時間だ・・・」
倶楽部の概要には営業内容とスケジュールが記されていた。
今夜は遠隔から倶楽部の様子を探り、『3110』からの情報の裏を取るつもりだ。
そのために犬飼が選んだのが、フォーマル・パーティーの時間帯だったのだ。
この時間なら、既に日は落ちているが、まだまだ歩行者があり、うろついても目立ちにくい。
倶楽部のボール・ルームの位置と横浜の地図を照らし合わせ、カメラスポットの為に犬飼は幾つかの建物を候補に上げていた。
倶楽部のボール・ルームの位置と横浜の地図を照らし合わせ、カメラスポットの為に犬飼は幾つかの建物を候補に上げていた。
3階のボール・ルームを覗くには同じか、少し高いぐらいの高さが理想だ。
木立や、看板などの障害物が地図ではわからないので実際に行ってみるしかない。
犬飼はガレージの隅にある棚の前で用意した装備を点検した。
犬飼はガレージの隅にある棚の前で用意した装備を点検した。
かなり大きめのカメラバッグ、鍵あけの七つ道具や、護身用のナイフなどが机の上に並んでいる。
「カメラはF-1だ。」
犬飼はカメラバッグのジッパーを開けて中のカメラを取り出した。
「カメラはF-1だ。」
犬飼はカメラバッグのジッパーを開けて中のカメラを取り出した。
使い込んで手に馴染んだCANON F-1 35mm一眼レフ。
ちょっと長めのズームレンズ70-300mm。
どちらもよく使い込んであり、犬飼の体の一部のような代物だ。これなら車の中での取り回しは楽だしズームリングを回すとそれなりに絵を引っ張る事が出来る。
これで建物の外観を撮れば警報装置や中の間取りが図面と一致するかある程度確認できるだろう。
人物も顔がわかるくらいに撮影可能だ。
犬飼はフィルムを入れるためにカメラの裏蓋を開けた。
犬飼はフィルムを入れるためにカメラの裏蓋を開けた。
フィルムはトライX400だ。粒子は粗いが多少暗くても写る。
カメラをバッグに戻し、予備のフィルムをバッグの内ポケットにばらばらと入れると、犬飼はジッパーをきちんと閉めた。
ちょうど、ラジオから天気予報が流れていた。
ちょうど、ラジオから天気予報が流れていた。
今夜は雨らしい。犬飼は黒いレインコートを羽織りビニールシートを一枚ポケットにねじ込んだ。
「よし。」
ずっしり重いカメラバッグを左肩に提げ、犬飼は静かに夕闇の中へ足を踏み出した。
「よし。」
ずっしり重いカメラバッグを左肩に提げ、犬飼は静かに夕闇の中へ足を踏み出した。