Nicotto Town


しだれ桜❧


刻の流れー102

編集長はタバコを出して火をつけると深々と吸い込んだ
「いつからか、勝見はアメリカ軍と好を通じるようになっていった。」
「ほお それはアメリカが市場を確保しようと航空機産業、自動車産業それに軍需産業と大票田の農業を何とかしようと動いたって事ですかね?」
「そうだ。過去にそんな大疑獄があったが、今度も臭いな・・・」
水面下でそのようなことが進んでいるとは犬飼が初めて聞く情報だ。
もしそれが本当なら日本の国益にも影響する。
何だかんだと不平を言いながらも国民は日本国に守られているのは良くわかっている。
税金と言う金を集めて国民の生活向上のためにうまく分配するのが政(まつりごと)だ。

「それで?」
「第一線を退いたといっても、防衛族の大物には変わりがない勝見が、俺が見たところでは同胞の溜まり場である紐育倶楽部の顧客リストに載っていないというのは、どういうことだ?」
犬飼は唸った。
「防衛族の裏でアメリカ軍とつるんで、何かたくらんでいる・・・・」
自衛のできる、強い日本を望んでいたはずの勝見が、アメリカ軍に近づいている。
「何でまた勝見はそんな180度の方向転換をしたんでしょうね?」
「勝見は圧力に負ける男じゃない。」
編集長は、先ほどの言葉を繰り返した。
「勝見を動かせるものは唯一、欲望しかない。」
「ふん・・・そりゃ、どんな欲望ですかね・・・」
「さあな。金かもしれんし、権力かもしれん。勝見はいろいろと野望の多い男だからな」
編集長は持っていた写真をばさっと机の上になげた。
「勝見も以前は倶楽部の客だったのかもしれん。」
「ああ、そうですね。」
「何かのきっかけで敷居が高くなったか、あるいは、自分から去って行ったのか・・・」
「情報源は、勝見議員関連ってこともありですか?」
編集長は宙に目を泳がせていたが、
「今のところはわからんな。」
「だが、俺の中の探究心がくすぐられるのは確かだ。」
目がきらりと光る。
「防衛族ですか?」
「ああ、それと、この倶楽部だ。」
「大分やる気が出てきたようですね?」
犬飼は写真の山の中から、ビルの外観と、警報装置の物を抜きながら、聞いた。
「ああ、モグラの穴が、どこまで深いのか、見てみたくなったよ。」
編集長が不敵に笑った。





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