刻の流れー106
- カテゴリ:自作小説
- 2023/07/31 11:05:03
国道2号線から神戸駅の西側に有馬街道がある。
平野から北に鈴蘭台を越えて直進すれば有名な有馬温泉に至る。
これは、神戸市兵庫区の平野から 天王谷を越えて唐櫃(有馬口)へと続く道で、天王谷越えと呼ばれていた。有馬街道の謂れだ。
5年前に要とアキラはこの支線で峠の勝負に挑み、結果、要は事故を起こして大怪我をしている。
5年前に要とアキラはこの支線で峠の勝負に挑み、結果、要は事故を起こして大怪我をしている。
要がこの因縁のあるコースを選んだのだ。
井上病院の駐車場からから国道2号へ出た要とアキラは、最初はゆっくりと走り、サイドミラーに追っ手が付くのを待っていた。
西をむいて走りながらアキラはしきりに後ろを気にしている。
ついさっき桜から、バイクとクラウンが自分たちを追いかけていったと無線連絡があったというのに、
「ほんまに食いつくかな?」
と不安そうだ。
「大丈夫だよ、一駅も走れば判るよ ガッ」
その時、後続の車2、3台後ろで、バイクが車線変更するのがサイドミラーにうつった。
「ガッ ほ~らおいでなすった! 気を引き締めてかかれよ。」
要がチェンジを下げて加速しだす。
「ほんまに食いつくかな?」
と不安そうだ。
「大丈夫だよ、一駅も走れば判るよ ガッ」
その時、後続の車2、3台後ろで、バイクが車線変更するのがサイドミラーにうつった。
「ガッ ほ~らおいでなすった! 気を引き締めてかかれよ。」
要がチェンジを下げて加速しだす。
コッコオォ~~~~ン。アキラもそれに続く。
二台は神戸駅を過ぎてすぐに相生町を右に曲がり神戸大学付属病院を通り過ぎた。
サイドミラーで2台のバイクが追ってくるのがわかる。
「2ストだ ガッ」
「了解 奴らは神戸に不案内のはずやからな、できるだけ判り易く走ってやらんとあかんで・・・」
追跡をまいてしまっては元も子もないと、アキラがのんきな心配をする。
「ははは、あまりワザとらしくのろのろ走ると勘ぐられるぜ」
要が笑うとすぐにアキラから
「ええやん 餌は目の前やねんし・・・」
と、返してきた。
「2ストだ ガッ」
「了解 奴らは神戸に不案内のはずやからな、できるだけ判り易く走ってやらんとあかんで・・・」
追跡をまいてしまっては元も子もないと、アキラがのんきな心配をする。
「ははは、あまりワザとらしくのろのろ走ると勘ぐられるぜ」
要が笑うとすぐにアキラから
「ええやん 餌は目の前やねんし・・・」
と、返してきた。
要はそれに手を上げて応えた。
目がヘルメットの中で笑っている。
危険の中にありながら、自分たちのバイクを信じている二人はまだかなり余裕を持って走っているのだ。
「くそっ 奴ら誘ってやがる。」
川崎が本田に無線で連絡してきた。
「了解、どっち向きだ?」
「有馬街道を北進中、神戸大病院を通過しました。」
「お前達はそのまま追え。隙があれば多少荒っぽい事も許す。」
「川崎 了解」
鈴木の声が割り込む。
「了解しました!」
マイクが拾った鈴木の大声が、耳障りに割れ本田は不快そうに顔をしかめた。
危険の中にありながら、自分たちのバイクを信じている二人はまだかなり余裕を持って走っているのだ。
「くそっ 奴ら誘ってやがる。」
川崎が本田に無線で連絡してきた。
「了解、どっち向きだ?」
「有馬街道を北進中、神戸大病院を通過しました。」
「お前達はそのまま追え。隙があれば多少荒っぽい事も許す。」
「川崎 了解」
鈴木の声が割り込む。
「了解しました!」
マイクが拾った鈴木の大声が、耳障りに割れ本田は不快そうに顔をしかめた。
ヘッドホンをかけたまま、ボリュームをぐんと下げる。丁度信号待ちだ。
『たぶん奴らは人気の無い六甲へ行こうとしている』
本田はそう考えると、車を表六甲の方へ方向転換させた。
「川崎、やつらを六甲へ追い込め。俺は表六甲から回る。3台でやつらを挟み撃ちにするんだ。 しばらく無線は使えなくなる オーバー」
「川崎 了解」
片側2車線の道を川崎と鈴木は前の2台に追いつこうと2スト特有の煙を残してひた走った。
平野交差点を越えると片側1車線に幅が狭まる。
『たぶん奴らは人気の無い六甲へ行こうとしている』
本田はそう考えると、車を表六甲の方へ方向転換させた。
「川崎、やつらを六甲へ追い込め。俺は表六甲から回る。3台でやつらを挟み撃ちにするんだ。 しばらく無線は使えなくなる オーバー」
「川崎 了解」
片側2車線の道を川崎と鈴木は前の2台に追いつこうと2スト特有の煙を残してひた走った。
平野交差点を越えると片側1車線に幅が狭まる。
要をアキラは相前後してひたすら六甲を目指していた。ヘッドライトが街角を切り取り、音だけを残して突っ走る。
すぐその後を2ストのバイクが追いつこうとアクセルを開ける。
こうして川崎たちのモトクロスバイクはジリジリとアキラたちを追い上げていった。
いつしか空気が変って熱い熱気を帯びた空気が涼しくなったので膝がひんやりする。
だいぶ高度が上がってきたのがわかる。
右に真っ直ぐ行くと白玉稲荷神社、それを道なりに左に進むと川に沿って短いトンネルがありそれを越えるとあと4キロくらいで六甲山への分かれ道になる。
快調に飛ばしていた要をアキラの後ろから一台バイクが突っ込んでくる。
要達もすぐに反応した。
ハングオンでカーブを切り返しながら速度を上げる。
まだまだバンク角は浅い。クオ~~~ン フオ~~~ン パ~~ン2ストの音が混じる。
「あいつら、完全に食いついたで。 へへへっ」
アキラは興奮気味に言った。
「気を抜くな そろそろ山道だ。 当たらないだろうが拳銃に気をつけろ!」
コーナーで右に左に傾くバイクの上から動くターゲットを正確に狙うのは、不可能に近い。
「あいつら、完全に食いついたで。 へへへっ」
アキラは興奮気味に言った。
「気を抜くな そろそろ山道だ。 当たらないだろうが拳銃に気をつけろ!」
コーナーで右に左に傾くバイクの上から動くターゲットを正確に狙うのは、不可能に近い。
要たち二人は追っ手の蹴りにさえ気をつければ逃げ切れると考えていた。
六甲T字路まで行けば環達のドッジが来る。
それが作戦の根幹だった。
追いつかれた要たちのバイクは4台が縺れる様にトンネルに吸い込まれていく。
小部トンネルに入るとエクゾーストノートがトンネル内を駆け巡った。