刻の流れー109 2
- カテゴリ:自作小説
- 2023/08/03 23:14:42
その時、シルバーのスポーツカーが一台、桜の目の前で急ブレーキをかけて止まり、運転手が飛び出してきた。
ドッジの助手席からサイドミラーで様子を見ていた環には、桜がクラウンに近寄るのをその男が止めたように見えた。
桜は、男の肩越しに、クラウンの方をうかがったが、そのまま踵をかえして、戻ってくる。その顔がにっと笑っていた。
「環 やったね」
と環の肩を叩く。
「あ、ああ」
桜の明るく弾んだ声とは対照的に、環からはやや沈んだ声が返ってきた。
二人が見ていると、何人かの男が、クラウンから運転手を引きずり出している。
「大丈夫よ、大した怪我じゃないわね。」
クラウンの男がびっこを引きながら、それでも一人で歩いているのが環にも見えた。
「そうみたいやな、よかった・・・」
それが、本音だった。その時、
「おちるぞ!」
「手を離せ!」
誰かが叫んだ。
『ギャギイギィギギギィィイィィイイイッ』
金属が曲がる音が再び聞こえ、ガードレールが遂に重さを支えられずに、クラウンは谷底に落ちていった。
『どどーん』
現場に居合わせた人々は、口々に驚きの声を上げるのが、ドッジの助手席まで聞こえる。
環は全てがスローモーションを見るかのように静かで、車も人も森が飲み込んだように感じた。
「環 何してるの、行くわよ!まだ、バイクが2台残ってるのよ」
桜はそんな感傷に浸っている環の気持ちを無視して、エンジンをかける。
「俺・・・」
何か言おうと顔を上げたその瞬間、黒い影が避ける間もなく環の唇を奪った。
「・・・・」
柔らかいプックリした唇の感触だけが残った。黒い影が目の前から離れたとき、やっと環はそれが桜の唇だったと気が付いた。
「環、本当に見直したわ。 これはご褒美・・・」
語尾を上げながら桜はそう言うとドッジをスタートさせ、ピックアップは闇の中、次のコーナーへと吸い込まれていった。
カーアクション 迫力満点
これはご褒美...よかった よかった(*^。^*)
夏だけはね^^;早く冬になってほしいかな(*^-^*)