Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


煙の行方 第三章

第三章

2週間程経った頃、彼から久しぶりに連絡が来ていた。
耳鳴りの様子がずっと気掛かりだった私に彼は元気そうに連絡をくれた。
「耳鳴りは大丈夫なの?」私が尋ねると、まだ少し違和感はあるらしいのだが、
「大分良くなってるよ」そう伝えてくれた。
原因はただの耳の痛みの様だった。
ホッとしたと同時に煙草に火を点けた。
それと同様に気掛かりなのは彼の抱えている日々のストレスの事だった。
私は彼に対し、とても悲しく苦しい気持ちを抱いていた。
どうして、そんなに一人で抱え込んでまで自分を追い込んでしまうのか。
気丈に笑顔で対応しているであろう彼に自分自身が重なる。
散々一人で泣いているであろう彼に、「無理して笑わなくて良いんだよ」自分自身に言うかの様に
彼へと連絡を返す。
一瞬連絡が途切れた時彼は泣いているのではないか、ふとそんな風に感じた。
どうやら私の勘は的外れではなく、彼は泣いていた。
彼が涙する時はどうしてなのか私も涙が流れてくる。
きっと、私と似ていると感じているからだろう。
生き辛さを感じている事、無理して一人で抱えて泣いてしまう事、どんな時でも笑顔で居ようとする事。
彼と連絡を取り合う様になって分かって来た事全てが、過去の私と重なるのだ。
彼の事を助けたいだとか、そんな大それた気持ちではなく、彼の日々の心の拠り所になりたい、
そう思っている私が居た。
主人はいつもの様に私の事なんて気にも留めていない様な態度で、自分の時間を楽しんでいる様だった。
会話のない主人にとって私はどんな存在なのだろう、そんな考えが頭の中に浮かんでは消えていく。
答えを聞く事すらも怖くて、そんな疑問は私の中で何度も浮かんでは消えてきた事だ。
今は彼に集中させて貰おう、そんな考えに至った私は彼へと正直な気持ちを送っていた。
「私は瑠偉の全てを知っている訳じゃないけれど、瑠偉の心の拠り所になりたいと思っているよ」と。
それが私の本心だったし、本音を言えるならば彼には私の人生のパートナーであって欲しいと思っていた。
「結婚」という「当たり前」の形ではなくても。
彼と話している間中私は本音も伝えてみようと思えた。
「ずっと一緒に居たいと思っているよ、結婚とかそういう関係では無くてね」人生のパートナーとまでは
言えなかったけれど、私が伝えたいことを伝える事が出来た。
彼は迷う事なく「ずっと一緒だよ」そう言ってくれたのだ。
私はその文字を見て煙草を点け泣いていた。
自然に涙が流れていた、おかしな感覚なのだが私の半分を取り戻せた気がして泣いていたのだと思う。
良く耳にするであろう「魂の片割れ」を見つけた気がしていた。
それは恐らく私の間違いの始まりなのかもしれないけれど、
私は私の感覚を信じてみようと思えた瞬間だったのだ。

アバター
2023/08/04 19:31
執筆でお忙しい中 訪問コメントありがとうございます。
そしてご丁寧なお気遣い 本当に嬉しいです。
知らない言葉 知らないこと 世の中いっぱいありますよね。
私ももっと知識に貪欲でありたいと思っています。
でも 気持ちが浮上したり降下したりするとその気もなくなってしまったり
なかなか思うようにいかないことも少なくないけれど
それも自然なことと思うようにしています。
黒猫さんがおっしゃるように 笑顔も頑張るようにしますね。

お話 なんて純愛なのでしょう。
世間では 不倫なんて呼ばれてしまうのかもしれないけど
魂が重なる瞬間て お互いにわかるのでしょうね
結婚てなんだろう?
紙をお互いに書いて契約してる関係なだけなのかな
もちろん それ以上のご夫婦もいらっしゃるだろうけれど
そんな気がする時もあります。

自分を取り戻せた感覚が間違いではありませんように。

脆く儚いからこそ美しいものと出会ってしまった気がして
私も涙が流れました。



Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.