黒いピアノと黒い猫 6
- カテゴリ:自作小説
- 2023/09/23 09:30:43
夜中にふと目が覚めると、エゼルはいなくなっていた。
そしてどこか遠くから「ギャオオオウウウ!」という動物の叫び声が聞こえてきた。
いつも起こしてくれた母がいなくなって、僕は寝坊ばかりしていた。
父は「もう学校に行かなくていい」と言って、僕たちはお互いに好きな時に起きて好きな時に食事する生活になった。
昼近くに起きた僕は、家の外の物置小屋の前で父がスコップを握っているのを
窓から見かけた。野菜でも植えようとしているのかな。
父が用意しておいてくれたミルクと茹でたジャガイモを食べていると
父が疲れた様子で帰ってきた。
「畑を作るの?」と僕が尋ねると父は驚いた表情を浮かべて「…!ああ、そうだ」と答えた。
「着替えてくる」と洗面所に向かった父を目で追うと、袖口に何か赤黒いものが付いていた。
「お父さん、エゼルに朝ごはんあげた?起きたらエゼルがいないんだけど…」
「…散歩にでも行ったんだろう」
夕方、父がどこかに出かけた隙に物置小屋のあたりを調べてみた。
何かを掘り返したような跡がある。
畑なんかじゃない。胸騒ぎがして、掘ってみると青いものが見えた。
エゼルの首輪だ。そして黒い毛皮にたくさんの傷…。
僕は悲鳴をあげた・・・。
家に帰った僕はテーブルでお酒を飲んでいる父をにらみつけた。
怒りで体が小刻みに震えて止まらなかった。
「お父さん、エゼルをどうしたの?」
父は真っ青になって「…知らない」と言った。父も震えていた。
「嘘つき!!」
「お父さんのせいだ!エゼルも、お母さんも!お父さんなんか大っ嫌いだ!!」
父の平手が僕の左のこめかみを打った。
僕は泣きながら、家を飛び出した。
そして嫌なことがあった時の秘密の隠れ場所、湖のそばの小屋に走った。
父は追ってはこなかった。
続
あと半分、よろしくお付き合いくださいませ。
小説、自分で書いてみて世間の作家の偉大さを再確認してます。
なかなか思うような文章が書けません(;^_^A 当然ですが。
鳩羽さんに褒めて頂けたのを励みに後半も頑張ります。
ああ、これで冒頭の小屋のシーンに戻るのね…。
何というかお父さんも不器用ですなぁ。
>いつも起こしてくれた母がいなくなって、僕は寝坊ばかり
お母さんの存在の大きさが分かる、一文だと思います。
こういう表現、素敵だと思うのb
そして、父と息子の物語が進みます。
暗い展開が続いてきましたが、そのまま海の底のように沈んで終わりはしませんので
ご安心?ください(;^_^A