Nicotto Town


せんちゃん


黒いピアノと黒い猫 外伝

夢の中で「あ、この場所は前にも来たことがある」って感じることってない?

路地を少し入ったところにある小さな古びたカフェ。
夢の中でわたしはそのお店の看板娘なの。
カフェの壁は大きさもデザインも様々な時計で埋め尽くされていて、
どれも律儀に時を刻んでいるので今が何時かわからない。

奥には、大きな柱時計があってその前のテーブルでいつも彼がお茶を飲んでいるの。
彼の隣では当然のような顔をして大きな黒猫がくつろいでいる。

黒い瞳でまっすぐにわたしを見つめて彼は言うの。
「やあ、エレナ よい夜だね」って。

「エレナ、そろそろ夢の中の王子様より現実世界で彼氏を見つけるべきじゃない?音楽学校に気の合いそうな人はいないわけ?」

ルームメイトのアメリアはあきれ顔だ。

「…まあ、学生結婚したのにすぐ離婚したわたしが偉そうなこと言えないけどね」と笑う。

お互いに性格は正反対だけど、バイトしながら夢をあきらめずに頑張ってるのは一緒。

わたしは声楽家になる夢を。彼女は老人ホームに勤めながら画家を目指している。

シェアしている部屋はわたしの楽譜と彼女の画材や雑多なものであふれている。
足元に気を付けて歩かないと、積み重なった本やスケッチブックがが倒れて悲惨なことになりかねない。

アメリアはソファベッドに仰向けになって、画集を広げていた。
表紙には金色の瞳の黒猫がリアルなタッチで描かれている。

「アメリア、その画集ちょっと見せてくれない?」
「…いいけど。画集じゃなくて絵本よ、これ。」

アメリアが渡してくれた絵本を手に取りページをめくる。
間違いない。夢で訪れるカフェの風景とそっくり同じだ。
大きな黒猫と黒い瞳の青年。
夢で会った彼らそのものだ。

「動物と話ができる青年と黒猫が世界中を旅するお話で、けっこう人気あるのよ。絵も綺麗だし」

「…これ、夢で見たわ」
「ん~? 黒猫って、見分けつかなくない?」
「この男性も夢で見たことあるの!」

「…そんなに気になるなら作者の名前をネットで検索してみる?」
アメリアがスマホを手に取り、「ルービン・オルレヴ」と打ち込んだ。

「あ、プロフィールは詳しく書いてないけど絵本の原画展示会やってるね。
ニューヨークのギャラリーで今夜の19時まで…」

「作者に会えると思う?」
「…エレナ、この田舎町からニューヨークまで車で4時間はかかるよ。
ちなみに今は16時過ぎ。わたし、そろそろ夜勤だから支度しなくちゃ」

「そうね。バカみたいね、わたし。行ってらっしゃい、アメリア」


**********************************************
黒猫の頭を撫でながら青年が語りかける。
「お父さん」
「グルルル」『バルドと呼べ』

「バルド、僕は少し散歩してからホテルに帰るよ。
ニューヨークの街は今日で最後だし…」

「ギャオウウン」『了解。デートだろ。今夜は二人きりにしてやるよ』
黒猫は風のように姿を消した。
青年は笑いながら、通りを速足で歩く。

最近お気に入りのカフェに入る。
店主はダヤン人。常連客もほとんどがダヤン人だ。

柱時計のそばのいつもの席に座ると、ふわふわとした真っ白な猫が足元にやってきた。
僕は彼女を膝に抱き上げ、「こんばんは。エレナ」と語りかけた。


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2023/10/01 11:47
亀さん、嬉しい~!
いや、文章はけずりにけずったのよ。長いと読むの疲れると思ってww
読んでいたかった、なんて言葉が感涙ものです(´;ω;`)ウッ…

「バルド人」→ダヤン人に修正しました。サンクス!!
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2023/10/01 11:21
おおっと、外伝読み落としてた!
短い! 短いよ!! 本編も、もっともっと読んでいたかったのにぃ~!(>_<、)
この際だから、どんどん続き書いちゃってはどうかな?
ところで「バルド人」?
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2023/10/01 06:32
ちくちくたん、実は最初に考えていたストーリーはこちらの雰囲気で同族の恋人が出来てめでたしめでたしwというものでしたww
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2023/10/01 06:13
ふぁーなんかパラレルワールドな感じでステキ・・(*・д・*)・・
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2023/09/30 22:12
エレナはにゃんこになれる人ですね。
でも、現実ではなくて夢の中の出来事だと思ってます。

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2023/09/30 22:07
エレナはにゃんこなの?
にゃんこになれる人なのかな?



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