Nicotto Town



会い読者

   ある作家と出会えるという催しに行く機会があった。その作家の本は1、2作品ほど読んだことがあったのでとりあえず行ってみた。

  作家は話したり動いたりしていた。催しの終わりの方になって「サインが欲しい方はどうぞ前へ」という言葉が作家本人もしくはスタッフから出た。せっかくの機会なので白い紙とペンを持って前へと向かった。
   来ていた他の人は作家の本を持って列に並んでいた。しまったなと思った。列に並んでいる間は作家がどのような様子でサインしているのかをじっと見ていた。そんなことしかできなかった。
   ついに順番が来た。作家は紙を何を言わずに受け取った。ペンは作家が既に持っていたので渡さなかった。作家に名前を聞かれた。たどたどしく答えた。上の名前はすぐに書かれたが、下の名前は漢字を上手く伝えることができず時間がかかってしまった。サインをもらった後に、社交的なお礼を言った。それからすぐに作家の元を離れた。本の感想や作家に対する応援は口にできなかった。そういったことが言えるほど、作品に触れていないからだ。
   家に帰ってから本棚を見てみた。本棚のすみっこに今日会えた作家の本が置かれていた。持っていけばよかっただろうかと少しだけ思った。

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2023/12/11 20:22
私は 印刷された物より、下手でも、上手関係なく 小説家さんの直筆に価値を見出してしまいます。



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