1820番:お父さんのおかげでぼくが生まれてきた
- カテゴリ:日記
- 2024/03/27 10:43:14
お父さんのおかげで…ぼくが生まれてきた.
ありがとう.
生前、父が軍隊時代の話をする度、「ぼくはお父さんの幸運の
おかげで、この世に生まれてこられたよ、ありがとう、と言っ
ていました.
そんなある日、「ありがとう」と言ったら、広島の練兵場時代
の話をしてくれた.父が志願兵として入隊したとき、まず最初
に送られたのが、広島の練兵場でした.話は朝礼をしていたと
きのこと.
昭和18年当時はすでに敵機の襲来も多く、特に広島のよう
に軍事施設や基地のある場所には、敵機が襲来した.こういう
敵機は返してはならない.報告されるからだ.迎え撃つ局地
戦闘機が向かう.腕のいい戦闘員なので、たしかに敵機はしと
めるのだが、このあと、恐ろしいことが起こった.
教練生が整列していた隊列に撃ち落された敵機の尾翼がほぼ
水平に飛んできて、隊列横一列に3名の腹を切り倒した.それ
は父のふたり手前で止まったという.気の毒にも3名は即死だ
ったそうだ.手前ふたりは顔面蒼白.朝礼が中止となったのか
どうかは聞かなかったが、おそらく中止になったことだろう.
ショックは大きく、その後、軍を逃げ出す人も出たという.
どう逃げ出したか.休みの日のことだった.(休みもあった
らしい)映画を見ようというので、仲間と神戸まで出かけた.
当時「新開地」というところに映画館があったという.
そこで1日楽しんで、さあ帰ろうというときに帰ってこない.
「逃げた」のである.
まあ、軍は警察でもないし、脱走者は犯罪を犯したわけでもな
いから、実家まで追及には来なかっただろうが、赤紙はそのう
ちやってくるだろう.
逃げなくても、夜中に泣き出すやつもいたらしい.だってまだ
15歳の少年だもの.尾翼が飛んできたそばにいたやつなんか
は、そりゃ泣きたくもなるだろう.純朴な田舎の少年だものね.