Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


柔くしなやかな月の下で

第十九章

静けさの中煙まみれになった部屋に私は「リム君、月でも見ようか」と声を掛け、「良いですね…」と
少しばかり落ち着きを取り戻した様に感じた彼は私の手を握ったまま、「ベランダへ出ましょうか…」と私を誘う。
「そうだね」と彼へと返事を返し、この間買ってきた男性用のスリッパへと彼は足を入れる。
私も同様に、スリッパを履き、ベランダへと二人して出た。
「今日は綺麗な三日月が出ているんだよ」そう彼へと言うと、「…ほんとだ…綺麗ですね」と相変わらず、月に恋している様に見上げる彼を見ていた。
「…大丈夫?」…「…はい、ありがとうございます」そんな会話から始まった。
十分程二人して月を見上げていただろうか。
彼は静かな口調で、「俺…昨日、すずさんにキスしたんです…」と言った。
「すずさんは覚えてないかもしれないけど…」と続けた。
ひんやりとした空気の中、私は昨日の夢を思い出していた。
「…私、夢を見ているんだとずっと思ってた」…「俺…ずるいですよね、ほんと…」と自嘲している様に笑った。
「すずさんの記憶が薬で曖昧なの分かってたのに…」…「すずさんが愛おしく思えて…」と彼は月を見ていた目を私へと向け、いつもの様に笑った。
「ちゃんと、伝えますね…俺、すずさんが好きです」真っ直ぐな目に嘘は無い様に感じた。
「…ありがとう」そう答えた私は夢だと思っていた事が現実であった事に恥ずかしくなってしまい、
「…私も…リム君が好きだよ」と、照れ笑いを含みながら彼へと伝えた。
「…はは」と彼が笑った事に対し、私は少し怒った様に「なんで笑うの」と聞く。
「すずさん、昨日と同じ様な事言うんですもん」と言う彼に、私は「そうだったんだ」と二人して笑った。
ひとしきり二人で笑った後に、彼は真剣な目で「抱き締めても良いですか?」そう問う彼に、
私は頷く事しか出来なかった。
ふんわりと彼の香水を初めて感じ取りながら抱き締められ、私も彼の背中へと手を回した。
「…落ち着くね」そんな事を言ったのは私だった様に思う。
彼は長い時間私をそっと包み込む様に抱き締めてくれていた。
顔をお互いに見る事は無い状態で、彼は「すずさん…キスしても…良いですか?」とふわっと、彼の香りが動いたのを今でも覚えている。
私の顔を覗き込む様に、整った顔が私を見つめていた。
私が、「うん」と頷くと彼の手が私の頬にゆっくりと触れ、撫でてくれていた。
「ありがとうございます…」そんな風に彼は言い、両手で私の顔を包み込んだ。
優しい、優しいキスを私達はした。
ふわっと離れた彼は「…怖くなかったですか?」…「全然怖くなかったよ」そんな会話の中、寒くなって来たベランダで、「…良かった」と安堵している彼は言った。
「…寒くなって来たね」そう彼へと伝えると、彼は私を温めるかの様にまた抱き締めてくれた。
私は深呼吸をし、「温かいや」そう呟いた。
抱き締められながら、彼は「俺達って…その、恋人になったんでしょうか?」と私へと問う。
「ふふ…そうだね」と私は答えた。
私達は三日月が綺麗な夜に「恋人」へとなったのだ。
月明かりの中、私達は顔を見合わせまた優しくも儚いキスを交わした。
お互いの顔を見つめ合いながら笑い合い、「部屋に入りましょうか」と彼は私を促す。
「恋人」になって初めての私の部屋へと足を踏み入れた。
「ポトフでも食べましょう」と彼は寒くなった身体には沁みるであろう提案をしていた。

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2024/04/07 20:22
静けさを共有できるって それだけですごく貴重な相手だと思います
会話がなくなると つい 焦って言葉を探してしまうこと
多々あります 汗

ついに二人が恋人に!
怖くない距離感 大事!!
二人を優しく見守る夜空に輝くお月様
ロマンティックで ふう とため息が漏れてしまいそうです

二人の心も ポトフみたいに温まりますように



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