「花に嵐となるものか」2/2
- カテゴリ:自作小説
- 2024/05/11 00:12:28
「ようやく解放された」
両腕を天へと伸ばし解放感を露わにするヴィヴィは、そのまま腕を背後に回しなんとコルセットを外し始めた。きつく胴体を締め付ける編み上げのリボンを手早く解き、後ろ身頃を左右に揺らしてコルセットを脱ぎそのまま拘束具を道端へ放り投げた。もともとは庶民の出のヴィヴィらしい奔放な振る舞いである。
私も体が苦しくないと言えば嘘になるが、抵抗感が勝りこればかりは真似はできなかった。
「あら、そこのご婦人。素敵な靴を履いてますね。よければこのイヤリングと交換しません?」
ヴィヴィが声をかけたのはパン籠を片手に提げた小太りの女性だ。どうやら踵の高い靴も気に入らない恋人は、通りすがりの女性に譲ってもらおうとしているらしい。
大ぶりのエメラルドをたくさんのダイヤモンドが囲んだイヤリングに女性は目の色を変え、喜んでその釣り合いの取れていない交換を受け入れた。因みにこのイヤリングも王子からの贈り物だ。
これからは馬車も荷物持ちもない生活なので、私も靴を履き替えることにした。同じように町娘に声をかけサファイアのネックレスを差し出す。
婚約破棄された悪役令嬢の再出発は履きつぶされたくたくたの布靴でとなった。
「早くこんな堅苦しいドレスも脱いでしまいたい」
「そうね、全く似合ってないもの」
「もう城の外だから意地悪は言わなくてもいいのよ? それともエティは本当に悪役令嬢なの?」
「貴女にぴったりのドレスを私が見繕ってあげるということよ」
幸い胸元には大金が潜んでいる。ドレスの一着くらい余裕だ。どうしてドレスを贈る役目が私ではなく王子なのだろうと密かに不満を抱いていた日々ともこれでお別れできそうだ。
「本当に楽しみ。わたしの故郷でエティと暮らせるなんて。絶対夢を叶えましょう」
ヴィヴィは大勢の弟子を擁する絵画工房を開きつつ画家として名を残し、私は学ぶ機会のない貧しい子供に学問を教える。目下、それが二人の夢だった。
横を流れる川の水面のように煌めくヴィヴィの瞳は、夢と希望で鮮やかに彩られていた。その輝きについ見惚れる。
「エティ?」
「ああ、ごめんなさい――――ねえ、ヴィヴィ」
「なに?」
「愛してるわ」
何の脈絡もなく告白する私にヴィヴィは一瞬虚を衝かれ黙ったが、すぐに答えを返してくれた。
「エティ、わたしもあなたを愛してる!」
ラノベっぽく平易な文にしたかったのですが、ずらずら言葉多めに書くのが好きなので
そこが大変でした;;
ロワゾーさん>
ありがとうございます!
嫌がらせは私がさせませんのでご安心を!
素敵な悪役令嬢✖️2でした。
「両腕を天へと伸ばし解放感を露わにするヴィヴィは、そのまま腕を背後に回し...」というところが好きです。人の動きの流れが自然に描かれていますね。