テニスの王子 人生に比べれば東大なんて楽勝!!?
- カテゴリ:自作小説
- 2024/07/23 05:39:47
一樹くん憧れの「肉入りビーフカレー」、1年に1回、大晦日の日にありつける。
人生にくらべりゃー、東大なんて楽勝だ!!!
人生にくらべりゃー、東大なんて楽勝だ!!!
「極貧にして天才」、我が青春学園のメンバーの1人、一樹君を一言で紹介すればこうなる。今回は彼がヒーロー。
テニスチャンピオン誕生後、雄介(すもうとり)の焼肉屋で、みんなの顔色を伺いながらカルビ肉にムサボリついていた極貧ぽい少年を覚えているだろうか。
極貧天才少年「一樹君」、彼はテストの成績が常に学年トップという、信じられないような男。
自分でもそう思っているし、周りもそう思っている、この一樹君の未来には、東大の二文字しかないことを・・・・。
一樹は突然変異の子だと、小学校の頃から言われていた。
彼の父親は三交代勤務の工員、母親は教養も無く下品で不細工な痩せた女で、3人兄妹のうち、彼だけが信じられない位に頭が良い。
彼の兄だが、今の時代に高校も行かず、中卒の学歴で、自動車工場に入り、父親そっくりの工員人生を歩んでいる。
この兄も伝説の人で、ほとんどのテストというテストを名前だけ書いて出し、3年間一日も休まなかったという人物。
結果が評価され、お情けで中学卒の資格を得た。(本当の学歴は、おじいちゃんと同じ小学校卒程度、父親と同じ学歴で社会に出た、単純労働大好き人間です。)
3つ下の妹も、この兄と同じ状態とか。
親戚もそんな人達ばかりで、こんな状況の中で成長を続けてきた天才一樹君は、「僕の家系は最低ランクの人達」と、天才なりの苦悩を込めて、親しい友人達に打ち明ける。(僕もその中の1人)
実は彼には、ごく親しい友人達にしか明かさなかった、「天才」の秘密があった。
君は、直感像素質という言葉を知っているだろうか。
直感像素質とは「1回見たものを頭の中に、写真で撮ったようにそのまま再現出来る能力」で、簡単に言えば、「教科書を1回見ると、そのすべてのページが頭の中に記憶されるというもの」で、彼は自宅で勉強する必要がほとんどない人間なのである。
左が、直感像素質の持ち主、指揮者の岩城宏之
頭の中に大量のカンニングペーパーを持つ怪物のような一樹君、彼の前には、テストなどというものは無意味で、ほとんどの人間がテストという恐怖の刃物で脅かされている世の中に、一人だけ恐怖をまったく感ぜず、むしろ歯を磨いたりオシッコをする程度に感ずる人間、あるいは、セックスに近い快感すらも感ずるらしい?我らが一樹君。
だが、そんな天才一樹君の中学生としての日常生活にも、不自由で苦手でどうにもならないことがある。
それは、食べることや、着ることや、寝ること。
衣食住で、普通の人達とは比較にならない位の苦労を、生まれてからずっと、彼はし続けてきたのだ。(彼の生活は、五十歳程度の寿命しか持たない、アフリカのあちことで見られる人々に近い。)
生活保護に近いようなわずか2部屋の工員用社宅で、白痴に近いような家族と寝起きし、食事といえば、1月に1回程、肉というものにありつける極貧家庭で、彼の家でカレーと言えば肉の入ってないルーとタマネギ野菜だけのカレーのこと。
一樹家のいつものカレー
でも、青春学園の門は、一樹君のような極貧の子どもにも開かれていた。
実は、彼のテニス活動費は、彼のスポンサーである、大金持ちの県会議員の家庭から出ていた。その見返りとして、県会議員の子の家庭教師(実はカンニングの手伝い)をやっていたらしいが、証拠は皆無(ただ、そういう噂はあった。県会議員の子は難関校へ入らないと、議員をしても馬鹿にされる。子どもの時から、結構大変なのです。)
牧師の家も、教会のバザーへの寄付の売れ残りの衣類を、この天才少年のために提供していた。
食べ物の提供は、雄介のママの主な仕事で、一樹はペットの犬のようにチアママに甘え、なついていた。
貧しさに脅えながら、地域社会の親切と級友の友情にすがって、東大一直線の一樹君、彼には青春学園が唯一の息抜きの場だった。
一樹君は5年後にはここへ立つ予定(東大安田講堂にて)
彼を見ると、牧師の子でなくても、「彼の人生に幸いあれ・・・」と祈りたくなる。
それ程、極貧天才少年の歩みは危なさに満ちていた。