Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


深淵の中の蝶

第五章

夕飯を作ろうと思い始めて30分程経った頃、私は…隣人は本当に来てくれるのだろうかと、猜疑心に飲まれていた。…社交辞令的な発言だったのでは…?と決まった筈のオムライスを作れずにいた。卵を溶き始めてなんだか作る気になれなくなってしまった私だ。時計は18時を目前を指していた。まぁ、人なんて信じたってしょうがないしな…と思う他出来なくなってしまっていた。どうしようかな…と思い始めていた頃、18時を過ぎてしまった時計の針をボーっと見つめていると私の考えとは真逆にインターホンが鳴った。「…はい」とインターホンのモニターに映る隣人が立っていた。「あ…こんばんは、悠です」…「あ…こんばんは、今出ますね」隣人は少しばかり遅れた時間になんだか申し訳なさを感じたのか、何処か気まずそうにしていた。私は玄関に向かい、ドアを開ける。「…すいません、少し遅れてしまって…」と小さく呟いていた。「…いえいえ、大丈夫ですよ…良かったらどうぞ入って下さいね」…「はい…ありがとうございます…お言葉に甘えてお邪魔します…」何処か気持ちが落ち込んで居る様にも見えた隣人は私の部屋へとゆっくりと入って来た。「適当な所に座って待ってて下さい…」私は隣人へと伝えると、「…すんません…今日食欲無くて…」…「それじゃあお話でもしましょうか」…「助かります…」…「何か飲みたいものはありますか?」そう尋ねると、隣人は「…珈琲あります?」…「インスタントですけど…」…「全然…珈琲頂きたいっすね…すげー甘いのでお願いします」私は溶いていた卵を冷蔵庫に仕舞い、「カフェオレにしますか?」…「あー…良いっすね…お願いします」そう応えて貰った後に私はお湯を沸かし始めた。隣人は昨夜にも増して、眼に光を失っている様に見えた。「…こんな事聞いても良いのか分からないのですが…何かあったんですか?」…「あぁ…なんか気遣わせちゃってますね…すいません…」…「いえいえ、私なんかで良ければ…お話聞かせて下さい」…「ありがとう…ございます」…「こちらこそ、昨日の夜は…助けて頂いてますし…悠さんのお話し聞く事しか出来ないと思うので…」…「今の俺にとっては…一番助かる言葉っすね…ありがとうございます…」…「そんなそんな…」…「今日、恋人の葬式だったんすよね…」…「そうだったんですね…悠さんは大丈夫ですか…?」…「俺は…ちょっと今頭ん中ぐちゃぐちゃで…」隣人の言葉が途切れ途切れになる頃、お湯が沸き私はカフェオレを入れ、彼の前へとマグカップを置いた。これから長い時間を掛け、話を聞く事になるであろう、そんな予感のする夜の始まりだった。

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2024/07/27 16:33
そうでしたね
楽しいことの始まりじゃなくて 大変なことをお互いに抱えていたことを
すっかり他所へ置いてしまっていました

1週間経つと忘れてしまう私のポンコツ具合をお許しください

甘い優しい珈琲と 優しい隣人
どうかどうか 少しでも気が晴れますように



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