Nicotto Town



ほんとに日記

引っ越しに付随して昨年のふるさと納税のワンストップ特例手続きの中でうまくいかなかったことが通知されてきて、役所に行った。

受付窓口にそもそもの担当課を尋ねると「ふるさと納税のワーストップ、ですね?」と復唱される。...war stop...?文法的にはともかく(stop the war)、素晴らしい理念だ。なにせ8月だし,とちょっと感動したあと、いやでもワンストップ特例を市役所の総合窓口の方がご存知ないのかとちょっと戸惑う。一応長年生きてこじらせた孤独なオタクを自認しているので、私は別に名だたる大型書店で「トルストイ?実用書ですか?」などと聞かれても物申したり呟いたりしたりしないつもりだ。人には人の生き方がある。眼の前の書店員さんは私よりきっとウィンタースポーツかモノポリーかEDMか自廃墟探索かダムか脱出ゲームか何か知らないが別の世界についてきっと素晴らしい知識を持っているのだ。そのうえで「書店員にディケンズって誰すか」と問い返されて驚愕したと公に書き綴る村上春樹氏のような価値観もまた否定してはならない(そもそも個人的には村上春樹の作品は多分全部読んでいる程度にはファンです。ただ身近にいたら結構付き合いづらい人だなとは思う)。それこそ人生修行の意味であり平和への道。コパフィールド、戦争と平和、stop the war...
再び受付の方の名札を見るとどうやら受付は外部の民間会社に委託されているようだ。知らなかった。ということは、ときに役所に電話して一般名詞が伝わらないなというときにも訝しんではいけない。世の人の常識のフィールドはみな違う。むしろ今年のオリンピックの選手も高校野球に出場校も一つも出てこない私のほうがはるかに非常識だ。
ともあれ彼女は私に階数と長い部署名をを教えてくれた。なんとか戦略なんとかプロジェクトなんとか課。..これ、何かで見た。なんだ。と私は嬉々としてエレベーターの8回を押した。あれだ。カフカ。役所の中でめちゃめちゃたらい回しにされるやつなかつった?というか、世にも奇妙な物語にも多分一回はそういう回ありそう。そうそう、全く同じじゃないけど、「食事に行きたいのにどうしても目的地にたどり着けない」ていう映画が昔あった。シュールレアリズムを代表する映画監督のひとりブニュエルの「ブルジョワジーの密かな愉しみ」。
カフカといえば、掟の門という作品は最高に好き。
ある男が門にはいろうとするが門番に許可されない。「今は開けることができない」。男はものをわたしたり門番の言葉を疑ったり、いろんな顛末があるけど結局とてもとても長い間、ついには死ぬ間際まで門を開けることを許可しない。そして最後に男は尋ねる。「どうして自分以外の人がだれひとり門を入ろうとやってこなかったのか」。門番は答える。「この門はあなたのためだけの門だったからだ。私もでかけよう、そして門を閉めよう」。
カフカは好きだ。カフカなら友だちになりたい。カフカは役所勤めしながらよくこんな類の小説を大量に書いたものだ。同僚の気分を知りたい。
 その後私は役所と税務署をたらい回しにされるのだけれどこんなにウキウキと盥回しされている私はまあおよそ幸せな人間だよなと思った。




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