Nicotto Town



自作小説倶楽部8月投稿

「綺麗な指輪」

この指輪? おばあちゃんの形見なのよ。
そうかなあ。大したものじゃないわ。古いからよく見ると傷もあるし、石だって小さいでしょう。
まあね。気に入っているわ。魔除けみたいなものよ。
やあねえ。私は特別に運が良いわけじゃないわ。勉強だってこうして頑張っているし。
たまたまよ。私はそんなにモテていないわ。

小さいけれど赤い石はバーの淡い照明の光の下でもきらきらと輝き、私を魅了させた。
大したことはないと言っていたけど、やはり特別な宝物なのだと実感する。
うっとりしていると「お隣いいですか?」と声を掛けられた・
振り向くと青白い顔の男がいた。---いや、白い肌はなめらかで触れてみたい。
がりがりに痩せていてガイコツ見たい。---いいえ、太っているよりずっといい。
鋭い釣り目、---目つきが悪く見えるけど、それは知性と男らしさの顕れだ。
にやりと口元が歪む、、---なんて素敵な笑顔。
私はにっこり微笑んで男が隣の椅子に座るのを許した。
座った男の視線が私の右手に吸い寄せられる。
「綺麗な指輪ですね」
「ええ、友達からのプレゼントなのよ」
「この指輪は貴女に一番似合うから、お友達は貴女に贈ったんでしょうね」
「お世辞でもうれしいわ」
「お世辞じゃあありません。本当に綺麗な指輪だ。失恋したことなんてどうでもよくなる。ここで貴女に出会ったことは運命かもしれない」
「貴男を振るなんてひどい女ね」
「ええ、気のあるふりをして俺を散々振り回した挙句、彼氏という男と一緒に俺をストーカーで訴えると言いだしたんです。それでも諦められなくて、さっきまで彼女を俺のものにする方法を考えていたんです」
私は急に胸が苦しくなった。この男にそんなに愛されることは幸福に違いない。
お金持ちでハンサムな彼氏を持って、みんなに羨まれたいと願っていたことも今はどうでもいい。いや、きっと願いはこの男が叶えてくれるのだ。

「二人が私の友達? とんでもない」
若い女性は警察の事情聴取におどおどと応じていたが、「親しい友達ですか?」という質問に憤り、緊張は消し飛んだ。
「女性の方は大学の同じゼミなので休憩時間に話くらいします。でも、友達だと思ったことはありません。連絡先も自宅も知らないです。それなのに、どういうわけか私に対抗心を燃やして髪型やファッションを真似るだけに留まらず、私の指輪を盗んだんです。プレゼント? そう、言いふらしていたんですか? ありえない」
怒りで震える女性を警官がなだめつつ聴取は続く。
「男の方はバイト先で知りあいましたが、ストーカーです。あいつのせいで私、ハイトを辞めたんです。警察にも相談したから記録は残っていると思います。やっと男友達に彼氏のふりをしてもらって追い払ったところでした」
そして二人の関係について問われると女性は急に口ごもる。
「二人の関係? 知りようがありません。接点はないと思います。知りあって長い時間は経っていないのじゃないかしら、あの、ところで私の指輪は返してもらえるのでしょうか?」
警官は驚いた。事件を起こした男が一時的に指輪に執着していたことがわかっているが、かなり古いが高価なものではないと判明している。
女はため息をついて言った。
「返してもらわないと困るのは私ではないんです。あれは呪いの指輪で、私以外の人間が持っていると災いをもたらすらしいんです。今回みたいにストーカーに首を絞められて殺されかけるとか。私は実は巫女の家系で、代々あの指輪の呪いを封じているんです。そんなこと他人には言えないから、祖母の形見で大切なものだと言っているんですけど、」

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2024/09/13 22:10
呪いの指輪
因果応報というものですよね



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