Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


深淵の中の蝶

第十二章

思う存分泣いた様子の彼は、「…少し、煙草吸って良いすか?」…「うん」そう答えた私は、彼の行動や仕草を観察している自分に気付いた。「ごめんね?顔勝手に触ったりして…」そう伝えると、彼は優しい笑顔で「いえ…全然っす」と答えてくれた。…「今日はもうそろそろ帰った方が良いかな…?」…「えっと…もう少しだけで良いんで一緒にいてくれません…?」…「悠さんが、そうしたいなら…是非」…「こちらこそ是非ともお願いしたい所っす」…「それじゃあ、悠さんの気が済むまで一緒にいましょう?」…「ありがとうございます…マジで」…「いえいえ、そんなそんな…」…「由佳里さんは煙草、持ってます?」なんとなく持っていた煙草に有難さを感じながら「持ってるよ」とポケットから煙草を取り出し、彼へと見せた。彼は柔らかく笑い、「じゃあ、一緒に吸いましょ」そう言ってくれた。「ありがとう」彼へとそう返事をしながら、持っていた煙草へと火を点けた。二人して吸う煙草はとても心地良く、美味しくも感じた。言葉のない煙だけの時間が二人を包んでいた。時刻は既に0時を目前にしている頃だった。「なんか…なんつーか、由佳里さんって落ち着きます…」…「そうかな…?」そんな事を言って貰えるとは思ってもいなかった私はなんだか、照れ臭くもあり、嬉しくもあった。「あの…少しお願いしたいんすけど…良いすかね?」…「ん?」…「気持ち悪かったら断って貰って良いんすけど…抱き締めさせて貰えませんか…決して卑しい気持ちじゃないんすけど…」…「あ、うん…」そう答えた私に吸い終わった煙草を消し、彼は私をそっと優しく抱き締めた。「…人の体温って、なんか良いっすね…」…「そうだね、落ち着くよね」私も彼を包み込むように抱き締めながら、ゆったりとした時間が過ぎていく。なんて心地が良いのだろう…。私はホッと心が休まる感覚になっていた。結婚していた当時には感じた事のない居心地の良さだ。どうしてそう思うのかはきっと、彼に対して好意的な感情を抱いて居るからかも知れない。「なんだか、ホッとする…悠さんに抱き締めて貰えると…」そう私は彼へと伝えた。彼は「俺もなんすよね…なんか、不思議な感覚っす…」彼の纏うほんの少し甘めの香りが漂う中、お互いがお互いを求めて居るかの様な錯覚に陥りそうになる。「悠さんには…どうしてなのか分からないけど、恋人さんの事を愛し続けていて欲しい気がするよ…」…「それは、変えられないっすけど、どうしてそんな風に思ったんすか?」…「んー何でだろうね…?私にも良く分からないんだけど…」…「そーなんすね、何か違ってたら申し訳ないんすけど、お互い不思議な感覚じゃないっすか…?」…「うん…そうなんだよね、凄く不思議な感覚…分かるよ…」お互いに柔らかく包み込みながら、抱き締めながら深く呼吸をし、お互いを理解しようと言葉を交している様にも思える時間が過ぎて行く。時間を忘れてしまう程の居心地の良さに、私は眠気に襲われつつあった。「…名残惜しいけど、そろそろお暇しようかな、時間も時間だし…」…「あー…もう2時なんすね…あっという間の時間っす、俺だけかもしんねーんすけど」…「ほんと、あっという間だよね…」…「そうっすね…なんか少し寂しいっすけど、今日はありがとうございました…」…彼は私から離れ、「明日は…時間あります?」…「うん、明日は私の部屋で話そうよ、ご飯食べれると良いんだけど…」…「ありがとうございます…それじゃあ、何時頃が都合良いっすか?」…「18時頃かな…?何か食べたい物はある?」…「そうっすね…食いたい物っすか…なにがいっかなー…」…考え込む彼を見つめながら、私も同じ様に考え込み1つ思い付いた食事を伝えてみた。「まだ少し寒いし、お鍋なんてどうかな…?」…「おー良いっすね、鍋一緒に食いましょうか」…「嫌いな食べ物とか、何かある…?」…「俺、こー見えて好き嫌いないんすよ…はは」…彼は美容師らしいと言うか、一見の見た目は派手に見える風貌をしていた。髪色も赤みのある髪色をしていて、そんな彼の見た目に私は偏見でしかない「嫌いな物がありそう」と思ってしまっていたのだろう。「あはは…そっか、じゃあ何のお鍋でも大丈夫そうだね」…「うぃっす、あ…俺が食材買ってきます、由佳里さんは何か食べれないもんとかあります?」…「ううん、私もなんでも食べれるよ」…「じゃあ、ミルフィーユ鍋にしません?」…「良いね、美味しそう」…「由佳里さんが嫌じゃなかったらっすけど、一緒に作りましょうよ」…「あー良い考えだね、ありがとう」…「いやいや、こちらこそありがとうございます」…「じゃあ、そんな感じで…時間は18時頃で良いっすか?」…「うん、18時頃ね」…「それじゃあ、18時に間に合う様に伺いますね」…「うん、了解」明日の予定も決まった所で私はお暇する事になった。「それじゃあ、明日ね」…「はい、また明日っすね…」…「おやすみなさい」…「うぃっす、おやすみなさい」…彼の眼に光が宿っているように見えた私は、ほんの少し安堵感すら覚えた。「それじゃあ、また明日ね」…「はい」そう伝え合った私達はお互いの部屋へと戻って行く事になった。

アバター
2024/10/06 19:52
一緒にたばこ
一緒に食事 みたいな感じで
それが人の距離を縮めてくれるような気がいつもしています
今は禁煙のところが多いので
分煙だといいなあって思っています
私は呼吸器が弱いので吸えないのですが タバコの香りは好きです
人に限らず動物もぬくもりっていいですよね
さあ次が楽しみです!
書くの大変だったと思います
いつもありがとうございます(*・ω・)*_ _)ペコリ



Copyright © 2024 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.