深淵の中の蝶
- カテゴリ:自作小説
- 2024/10/10 04:41:25
第十五章
私が目覚めたのは、すっかりと昼過ぎになっていた。ぼんやりとした頭の中で思い浮かぶのは悠さんの泣き顔…。相当辛いよね、なんて朧気に頭の中で思い出す情景。ベッドから起き上がり、ふらふらとキッチンへと向かい薬を飲んだ。…まだボーッとしている頭の中で…煙草吸おうと煙草へと手を伸ばした。ゆっくりとした所作で、いつも通りに煙草を咥え、火を点ける。煙草の煙が肺に浸透して行く。私はそれが心地良かった。少しづつ起きてきた頭と共に、ベランダへと向かった。「寒…」そんな事を呟きながらも、冷たい空気感に酔いしれる。
今日は天気が良い。さて、何をしようか…そんな事を考えながらも煙草をふかし続けていた。ゆっくりと起きてきた頭で私は洗顔等をしにバスルームへと向かった。…悠さん、ちゃんと眠れたかな…歯磨きをしながらボーッと考えに耽る。
…一人で泣いてないかな…色々と思い出すことは彼の事ばかりだ。…流石に考えちゃうよね…なんて思いながら、徐々に起きてきた頭で、鏡に映る自分を眺めた。…少し、痩せちゃったかな…なんだか貧相な顔になっている様な気がした。
「今日はメイクでもしてみよっと」気持ちを切り替えるかの様に、私はメイクルームへと向かった。鏡越しの私の眼には光が宿っている様に見えた。…これもきっと悠さんの存在のお陰なんだろうな…とふと思う。「ありがたい存在だな…」そう思う他なかったのたのは事実だ。…久しぶりにメイクするなぁ…なんて思いながらも、メイクへと集中していく。楽しいと感じる迄にはそんなに時間は掛からなかった。久しぶりのメイクへの楽しさに、何故だか心が弾む様な感覚だ。…悠さんは今頃、何をしてるかな…彼への恋心に気付いた私は、何をしていても、彼の事が頭で一杯になってしまう…。どうして彼に対して恋心などを抱いてしまったのだろう…そんな事を考えながらも、メイクに集中しようと思い、久しぶりのメイクに心躍りながら何色のアイシャドウを使おうか、なんて気を紛らわせていた。今日は久しぶりだし、コーラル系のアイシャドウでも良いかもしれない。そう思った私はほんのりと色付くコーラル系のアイシャドウを選んだ。
彼はどんな反応を見せてくれるかな…とまた彼の事を考えてしまっている自分にどうしたら良いのだろう…等と答えの分からない状況に迄なっていた。一つ深呼吸をして、「まぁ、良いか」と呟きながら、メイクを進める。時刻は既に15時になろうとしていた。私はなんとなくメイクも着替えも済ませ、煙草へと火を点けていた。無論、彼の好きな香水も纏いつつだが。なんだか不思議だ。私は彼に好かれようとしているのだろうか…。分からない感情だが、どうしても彼に抱き締めて欲しいといった感情が渦巻いていく。私の中の醜い部分なのだろうか…。
彼に対し、「恋人さんの事を一生忘れないで欲しい」という気持ちは間違いない、その反面彼に好意を抱いて欲しいという身勝手な感情も持っていた。私は一体、彼とどうなりたいのだろう…こんな風に洒落たように着飾ったりして…。
今日は18時の約束…ふと時計を見るとすっかりと17時を廻っていた。私は…後1時間かぁ…早く彼の優しい笑顔に会いたいな、と思う様にもなっていた。
…そうだ、今日はお鍋だ、準備でもしておこう…そんな風に思い、キッチンへと向かった頃にインターホンが鳴った。
男性がそう親しくない女性に泣き顔を見せるって珍しいことですよね
それを受け止める度量がある
というより本当に相性が良いのでしょうね
ベターハーフという言葉がありますが
まさにそのお相手に出会えたような気がしています
本心って本人が気づかないこともあるけれど
それに気づいて慌てず騒がずに対応できるのも大人だなって思いました
秋深し
お話と今の季節が少しずつ合ってきてよりリアリティが増してきました
続きはゆっくり待たせていだたきますね
お楽しみは温めておきます
いつもありがとうございます(*・ω・)*_ _)ペコリ