深淵の中の蝶
- カテゴリ:自作小説
- 2024/11/06 00:47:42
第十八章
私は気が付くと、彼の髪を触っていた。「…?どうしたんすか?」…「あ、ごめんね…なんかつい撫でたくなっちゃった…」背後にいる彼の柔らかくもふんわりとした髪の毛を触りながら、そう答えた。「…ごめんね、少し髪の毛触らせて…」そう伝えると、「分かりました」…「ありがとう」…「いえ、このくらい全然っす」…そう答えた彼は私をほんの少しだけ強めに抱き締めていた。背後にいる彼の髪の毛を触りながら…安心するな…と私は深く呼吸をした。白菜がくたくたになる迄お互いが心地の良い時間だった様に思う。彼の真意は到底分からない私だが…。「…あ、そろそろお鍋出来たかな…」ふと我に返った私は「少しお鍋見てくるね」…そう伝えると彼の腕が私から離れた瞬間にふわっと香る彼のやわらかい香水の匂いに何故だか安心感を覚えた。「…あ、そうっすね」…「煙草でも吸っててよ」そう伝え、キッチンへと向かった私は、高鳴る鼓動と気恥ずかしさで、どうして彼の髪を触りたくなってしまったのだろうと、少しばかり反省をしていた。…恥ずかさを感じずにはいられなかった…そんな事を思いながらも、鍋へと目を向け、様子を見ると良い感じに火が通っていた。私は彼へと「悠さん?白菜くたくたに煮えたけど、お好きな感じ?」と声を掛ける。「あ、はい、くたくたの白菜大好きなんで」と返事が返ってきた。…「それじゃあ、もうお鍋も出来た事だし一緒に食べようか」…「そうっすね、俺何か手伝いましょうか?」リビングから聞こえてくる声に「大丈夫、準備出来たら持ってくね」と返事をし、熱々のミルフィーユ鍋を器へと盛る。それを2つ準備し、丁度お箸も二膳ある。それらを、おぼんへと乗せ、リビングへと私は運んだ。「…何か飲む?」持ってきた鍋と箸を彼の前へと差し出しながら、私は尋た。…「白湯、頂けますか…?」…「うん、分かった」と返事をして、キッチンへと白湯を作りに戻る。…私も白湯でも飲もう…そう思った。二人分くらいの水をケトルに入れ、沸かし始める。
「旨そうっすね」リビングから聞こえてくる彼の声に、「うん、大成功かも」と笑って返した。ケトルに入れていた水はあっという間にお湯へと変化し、私はマグカップへとお湯を注ぎ入れた。ほんの少しの水も入れ、熱過ぎず、温すぎる訳でもない白湯を持って、リビングへと戻って行った。
「さ、温かい内に食べちゃおうか」…「そうっすね」二人して手を合わせ、「頂きます」と同じタイミングで言ってしまった事に何故か二人して笑っていた。「マジで旨そうっす」…彼は一口鍋を口にして「おぉ、旨いっす」とにこやかに答えてくれた。そんな彼の優しい笑顔に私も一口頬張ってみた。「わぁ、美味しいね」…「大成功じゃないっすか?…ははは」…「ふふ、そうだね大成功」と何気ない会話をする。…「由佳里さんはなんか、一緒にいると安心するっす」…そんな言葉を貰いながら、「…私も」と答えた。彼は鍋をおかわりまでしてくれていた。私は、既にお腹が満たされていた為、彼の綺麗な食べ方を観察したりしていた。彼もお腹を十分に満たしたのであろう、手を合わせ「ご馳走様でした」と呟いていた。そんな所も愛おしく見えたのは言うまでもない事だ。
美味しいですよね
でも好みってあるからほんとそれが合うってすごいことだなって感じます
笑顔で話ながら食事を美味しくとれるって大切ですよね
それができる二人なら先に進むことができそうな気がしてきました
これは伏線でしょうか?
秋から冬が深まって来るこの季節にリンクしてきて
なんだかドラマを見てる気持ちになってしまいました
ゆっくり先を楽しみにしてますね
いつもありがとうございます(*・ω・)*_ _)ペコリ