迷宮のスイーツパラダイムX
- カテゴリ:自作小説
- 2024/11/22 10:00:12
「脱出する魔法やアイテムをいくら用意しても、そういうのを受け付けない領域だったら無意味だろう?」
とりおんが指摘する。ゆみことぶらんがハッとする。
「要するに『迷っちゃったでござんすぅ~』ってことだろ?」
「はい、とりおんさんの言う通りでござんすぅ~。
じゃ、いっそのこと「テーブルマウンテン」に行きやすかぁ?
それとも「しあわせの箱」や「最後の巻物」を探しに行きやすかぁ?」
「どっちも「不思議のダンジョン」じゃあねーかッ!!
ロクにクリアもできなかったくせに、ウスラボケ~っとしやがって…!」
「ポケダンは、クリアしたでござんすぅ~」
「あれは不思議のダンジョンの中でも難易度は、ぬるま湯の部類だろッ!?」
木枯らしまりあの腹の虫がタイミング良く鳴いた。
「お腹がすいたでござんすぅ~!お菓子が食べたいですぅ~!」
「まりあ、お前なぁ…さっき、朝飯食ったばかりだろう?」
とりおんは困った顔をした。
「甘い物は別腹なんですぅ~!」
木枯らしまりあは口を尖らせ、ほっぺを膨らませた。
「お菓子って『山吹色のお菓子』かい?」
珍しくボケるぶらん。
「まりあ、お金が欲しいのか?私がいくらでも出してあげるよ」
ろきが指をパチンと鳴らすと、小判数枚がパッと出てきて、扇状にして見せた。
「山吹色のお菓子じゃ食べられないですぅ~!小判や金塊は、食べ物じゃないですぅ~!
どうせなら「ちいさなメダルチョコ」が食べたいですぅ~!」
「私なら、妖精トリッシュのアイスクリームかな?」ゆみこが口を挟む。
「あのアイス、確かに美味しいけど、お値段は超高いじゃないですかぁ~!」
「ああ、ぼったくりレベルだな」とりおんが冷静にツッコむ。
「え~ん、ヤツハシくんの「ナナイロ生八つ橋大福アイス」も、カリーアゲくんの「マカマカイ揚げ」も
『くまくまベーグル&ドーナツ』の「ハーベストムーンドーナツ」も「ハーベストムーンベーグルサンド」も
全然食べられなかったですぅ~!」
「そいつは残念だったな。また来年行けばいいんじゃあねぇのか?」
「そんなに待てないですぅ~!今すぐ食べたいんですぅ~!」
木枯らしまりあがあんまりダダをこねるので、とりおんは困り果てていた。
突然、あたりが暗くなり、スポットライトが点灯する。
「レディ~ス&ジェントルメ~ン!唐突に始まりました『のど自慢大会 in お菓子なダンジョン』!!
司会は、私「コトダ・マイク」と!」
「ウル・ムラヤマでお送りします!
お菓子なダンジョンにご来場の『迷宮探索者(ダンジョンエクスプローラー)』の皆様、奮ってご参加ください!
なお、大会の優勝賞品は、
『くまくまベーグル&ドーナツ』の「ハーベストムーンドーナツ」「ハーベストムーンベーグルサンド」1年分!!」
「参加しましょう!!」
瞳をキラキラ輝かせながら、秒で即決する木枯らしまりあであった。
「1番!チーム「ディ・モールト・見目麗しゅう」!『デスメタル・トリップ・セレナーデ』!!」
デスメタルとセレナーデ。相反する二つのジャンルの曲を融合させる「ディ・モールト・見目麗しゅう」の面々。
人狼族の男「ウル・ウルフ」。メインボーカル&エレキギター担当、カウンターテナーなシャウトが特徴。
チームの紅一点・クールビューティーなハープ奏者「ミーメ・オルフェウス」。
ミーメの恋人でチームリーダーの「ディモルト・ベネ・トナーシュ」は、ベースとバックコーラス担当。
侍クラスも履修している「ワシュウ・オード」は、オカリナをスティックに持ち替え、ドラムを担当。
鐘がたくさん鳴って「ディ・モールト・見目麗しゅう」は決勝進出を決めた。
「2番!カノン・シードル!ソナタ・シードル!『神になりそこねた男』!!」
双子の兄弟でウェルカム王国騎士団団長の「カノン」と「ソナタ」は、ギターをかき鳴らし、弾き語りで歌う。
鐘は、ふたつしか鳴らず、決勝進出ならず。
「3番!ノエル・ヨーク!『海魔女(セイレーン)にメロメロ』!!」
「の、のえる姉さん!?」
弟のぶらんは、いきなり、姉の「のえる」が出てきたので、面食らった。
ノエルの歌を聴いて、鐘叩きがメロメロになり、鐘をたくさん鳴らしすぎたので、不正行為とみなされた。
「おっと、これはいけません!
ノエル・ヨーク選手、歌で鐘叩きを買収していた模様です。よって、ノエル選手は失格となります!」
ウル・ムラヤマが流れるような名調子で解説する。
「4番!ドン・ブリカン・ジョー!『木枯らしまりあと結婚するのだ』!!」
「俺様は♪ドン・ブリカン・ジョー♪セルティック王国の御曹司♪
金と権力に物を言わせ♪欲しいものは何でも~♪手に入れてきたのだぁ~♪」
「どうやら、ドン・ブリカン・ジョー選手は、ミュージカル調でいくようです」と、コトダ・マイク。
「そうですね~、ここで路線変更するのも一興ですね。でないと、読者に飽きられてしまいますからね」
ウル・ムラヤマは、メタなことをしれっと解説に織りまぜた。
「ドン・ブリカン・ジョー♪
お前は♪セルティック王国近衛隊に逮捕され♪監獄島「アルカナニカ島」に送られたはず♪」
とりおんもミュージカル調になっている。
「ややっ♪ 貴様は~♪セルティック王国のぼっち軍人「トリオン・シニュフォード・メンドーサ」♪
なぜ♪眠狂四郎みたいな格好をしてるのだ♪」
「作者の趣味だ♪俺の「エンゲツナイ殺法」で♪今すぐ♪貴様を切り捨ててくれるわ♪」
「ならば♪こちらは「ヒッテイン・ミッツ・リューギ流」でお相手するでござるダス~♪」
「からくり剣豪伝 ムサシロードなんて懐かしいわね~♪」
ゆみこもノリノリでミュージカルに参加している。
「でも♪ムサシは二刀流でござんすぅ~♪居合の抜刀術は使わないでござんすぅ~♪」
「おおっ♪愛しの木枯らしまりあ♪
俺様の花嫁にそんな無宿渡世の旅人姿はふさわしくないのだ♪お色直しするのだ♪」
「あ~~~れ~~~♪」
まりあは、ドン・ブリカン・ジョーに腰元のコマ回しのようにグルグル回され、
あっという間に純白のウェディングドレスに着替えさせられた。
「まりあ♪私と結婚して初夜を共にしよう♪」
ろきが花嫁姿のまりあの手を握って口説いてきた。
「いざなみきーっく♪」「サイクロンZ~♪」
ゆみこに「いざなみきっく」されるろき。これで何度目だ?
「ろき♪ゆみこという奥方が居るのに♪まりあと結婚しようとするなんて♪言語道断♪横断歩道♪
そんな愚かな弟は♪双子の兄であるこの「せと」が♪安倍晴明に代わって♪おしおきよ♪」
某美少女戦士の決めゼリフと決めポーズをしながら登場する陰陽師のせと兄さん。
「私も「さきゅばす」の家庭教師『まりー』に夢の中に入る方法を教えてもらったもん♪ベッドの上でね♪」
「さ♪おしおきの時間だよ♪ろき♪」「セト…っ♪やめ…っ♪あ…っ♪お兄ちゃん…っ♪」
「陰陽師×天草四郎♪カップリング的に誰得すぎませんかぁ♪」
まりあは赤面しながらウェディングブーケを口にあてがう。
(まりあちゃんって実は結構、腐女子?)ゆみこは心の中でつぶやいた。
「おい♪お前ら♪揃いも揃って♪俺様を無視するとはいい度胸して♪…ぐえっ♪」
ドン・ブリカン・ジョーは、背後から何者かの当て身をくらって気絶した。
「ラリホー!スリプル!グッスリト!
お前ら!いつまで茶番を続けるつもりだ!?…ていうか、俺の出番、これだけかよ!?」
褐色肌の男性夢魔「インキュバス」の『マニッシュ・チェルノボーグ』が、苦言を呈した。