テニスの王子様その3 焼肉いっぱい喰ったよん
- カテゴリ:自作小説
- 2024/11/29 05:22:24
日曜日の午後6時になろうとしていた。季節は中ごろの秋、10月のことだった。
食欲の秋とも言うこの季節、我ら中学生の胃袋は急成長し、留まることをしらない。
その典型が我が愛すべきペアの雄介だった。
「おかん、どんぶりで頼む」雄介はチアママが準備する間もなく、どんぶり飯を要求。
チアママも心得たもの、「3杯はおかわりしなくっちゃ」と相槌を打つ。
ここは相撲部屋かと僕は思った。
焼肉の種類はカルビくらいしかわからないが、とにかく様々な種類の肉が、どうぞ食ってくれとばかりにでっかい皿に山盛り、その皿の隣に野菜を入れた大皿が並び、キムチもダイコンや白菜やキュウリが材料の、色んな種類のものが並んだ。
焼肉とは別にすき焼きみたいなものが出た。ああ、これが韓国のすき焼き「プルコギ」だな、おいしそう、よだれと腹の虫で、頭がおかしくなりそう。
生活保護家庭に近い一樹は上目使いにチアママの許しを伺い、許しが出るとわき目も振らず大量の焼肉にアタック。飯も食わずに肉ばかり食ってる。お前の所の台所はみんなが知ってる。死にものぐるいに食えと、僕は心の中で叫んだ。
牧師の子の範久はお祈りをしている。食料となった動物に許しを請わないと食べれないんだって、前に聞いたことがある。牧師って大変な職業だ。ゆくゆく親の後を継ぐからには今から牧師修行の毎日なんだ。
県会議員の子の久人は、やたらチアママに愛想がいい。来年の春の選挙に印象がいいように親に躾けられてるんだろ、県会議員の子も大変だ。
母子家庭の子の翔はママが水商売をしてるので、一番雄介の家庭に溶け込みやすい。まるで自分の母親同然の気分で、チアママと話している。
雄介の家も、夜は焼肉居酒屋と化すから、同業者のようなもんだ。
公務員の子の僕(リョーマ)はこういう場所ではほとんど目立たない。
子どもなのに、みんな親そっくりだ、何でだろ、何でだろ。
そして、沈黙の40分程が過ぎた。あれほどあった焼肉はあとかたもなく、あとは野菜とキムチだけが残った。戦いは終わった。お腹がみんな、異常にふくれている。
チアママは一人で上機嫌でビールを飲んでいる。雄介も、ママに注いでやってた。そして、雄介も少し飲んだ。顔が赤い。雄介とチアママは良い親子だと感じた。
焼肉屋を出ると、満月が綺麗だった。牧師はまたお祈りをし、県会議員はみんなを代表して、チアママにお礼を言った。
翌日は、相撲取りを除いて全員、お腹の調子が一日中おかしかった。(続く・・)