Nicotto Town


ジュンチャン


テニスの王子様 その4 「美しき日々」(w)


今回の主役は牧師の子の「範久」
  食料となった動物に許しを請いながら、焼肉に食いついたヤツのお話。
 
 テニスに明け暮れたあの日々を、今「美しき日々」と言おう。

 焼肉食べた日から1ヶ月が過ぎた。僕(リョーマ)と相撲取り(雄介)の華やかな日々は続いた。

 あの試合後の全校朝礼で、僕たちは再度、校長から手渡しで表彰状を貰ったのだ。

 大きい相撲取りと、小さいリョーマ君が、表彰台に上がったのだ。
 
 先輩たちは尊敬と嫉妬の眼で見るし、あの日以来、密かに思っていた女子の、僕を見る眼がこころなしか変わったように思えた。
 
 僕たちは、完全にヒーローだった。

 だが、我がライバル達も黙っていなかった。われ等二人だけ栄光の優勝では、後の4人はどうなるんだ。
 
 彼ら4人も、僕たちに勝つため、早速行動を開始した。

 今回の主役、牧師の息子の範久は、自宅である教会のミサをサボって、テニスに打ち込みだした。
 
 彼の家はキリスト教会だが、その生活は決して楽ではない。
 彼の教会は生活のため、英会話教室などもやっている。
 
 その彼が、僕と雄介の土俵だった学校近くの、ジャンボテニススクールに入会して来た。
 
 その上牧師の子としての将来を見据えたな過激?な自宅勉強の合間をぬって、早朝と就寝前に、秘密の特訓と体力増強のためのトレーニングもし出したという。そんな情報が、県会議員の息子の久人から入ってきた。

 範久は早熟で頭のいいやつ。
 
 彼は小学校低学年の頃から、当時の僕には決して理解できない難しいことを考えていた。(時々僕を確かめるように、彼の父親である高名な牧師の考えそうなことを平気で口にした。キリスト教史の研究家でもある彼の父は、既に何冊も本を出している人で、その世界では超有名人である。)

 小学校の低学年の頃の話だが、範久は普通の子と違ってあまりに牧師風で、家庭の躾からか常時薄着のため、湿ないじめにあっていた。
 そして、その頃の彼の唯一の友達が僕だった。
 
 十字架と聖書だけでは、いじめは止まらない。

 彼は冬のさなか、いじめに耐えかねてか、躾の厳しさからか、突然僕を訪ねて来たが、半ズボンに半そという、夏と同じ服装で来て、居合わせた公務員の父はびっくりして、どういう家の子なんだと、範久が帰ってから聞いたことがあった。(僕の親は生活保護家庭の子とでも思ったようである。)

 僕が事情を話すと、父は何故かひどく感動していたのを記憶している。

 何回も繰り返し、えらいやつだな、と父は言っていた。

 僕は範久の変わった服装や変わった行動は慣れているので、どうということはなかった。 (高名な牧師の子どもであることは、良い事も悪いことも引き起こすのだ。)

 僕からすれば、いじめに合っていた彼を小さい頃から助け、友人として付き合って来た僕の方が数段偉いんだぞと我が父親に言いたかったのだが・・・。
 
 実際のところ、この頃から僕の方が精神的に範久の世話になっており、ものの考え方や人間の生き方などを自然に教えてもらっていたような気が今はしている。

 その早熟な範久が、今テニスに燃えている。
 本気でテニスに取り組もうとしている。

 県会議員も、範久に引っ張られ、
更に母子家庭の子の翔も、生活保護家庭に近い一樹さえも、何とか会費を工面し、テニススクールに入った。
 学校を終えると、ジャンボテニススクールが青春学園という舞台に変わった。

 僕たちはお互いを本当のライバルと認め合い、勝つための努力を死んでも怠らない青春学園の優等生と変身して行ったのだ。

 ライバル達より1時間でも多く練習し、ライバル達の出来ない高度な技を覚え、圧倒的で超人的なスタミナを身に付けていくこと、それが日常生活の最大の目標となった。

 まるで何かに取り付かれたかのように、求道者然としてテニスに打ち込む様子は、全員が範久になったようなものだった。
 
 
 範久の心の姿です、やはり神と一緒!! 
 
 雪が降り始めた1年生の冬の初めの頃から、リョーマ君たちは、少しずつ男っぽくなった。
 少しずつ、背も伸びていった。

 春も、夏も、秋も、頭の中はテニス、テニス、テニス、そういう生活が始まった。
 
 まるでキリスト教徒のように、純粋にテニスだけに打ち込んだ日々。
 
 それは今から思い返すと、宝石のようにあたり一面に眩しい光を放つ、本当の意味で美しい日々だった。

 あの頃の僕らの顔は一年中黒くて、そして溢れ出した汗が1年中テニスコートに飛び散っていた




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