Nicotto Town


あなたに会えてよかった♪


【第15話】シン・ラジオ・ガール


「えっと… ソニーさんの家って、けっこーハイクラスなんですね…」

馬鹿か俺は。そんなこと言ってどうする。
相手に引かれたかもしれないだろ。

昼下がりの川沿いの道を、俺は意外なことにソニーさんと二人で並んで歩いていた。避暑地だから陽射しも都会よりは優しい。

「そんなことないよ。パナさんだって別荘来てたじゃないですか」
笑って此方を見上げるように、彼女が微笑む。

なんて可愛いんだ。
まるで天使だ。

「いや … 俺は…」
言い澱んだのに敏感に反応したように彼女は
「え?違うのですか?」

「ああ 俺は部活の合宿で、しかも共同合宿の相手方の手配で、ここに来たんですよ。自分の別荘じゃないんで」
ややどもりながらそう伝えると、彼女はそっと目線を外した。

「あ、だからですね。パナさん、
女の子いっぱい連れてきてた
みたいですし…」


んっ

んんんんんっ!!

やはり、バレてたかああああああ!

俺は内心でそう叫んでしまった(声は出してないぞ)

「いいなぁ、私なんて、せっかく別荘に来ても、一人だけなんですよ。あ、でも、”じいや”が同行してますけど ね」

じいや?

じいやってなんだろ?

まさか 使用人?
執事 みたいなもん?

この21世紀の御世に、「爺や」なんて存在があるなんて、まさに想定外だったからさ。

俺はその言葉にノーコメントだった。

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唐突に鳴ったドアベル。
俺はある種の予感を持って、慌てて玄関に向かおうとする甲斐名都やマッキーを(てかなんでマッキーが出ようとするんだろって思ったけどね)押さえて出てみた。

想像してた通り、そこにいたのは、隣の別荘に避暑に来ていたソニーさんだったんだ。
しかも着替えててさ。きちんと高校生らしく夏制服姿でね。

俺はソニーさんの制服姿を始めて見た。

うちの学園は、女子生徒はブレザー+ブラウス+ネクタイなんだけど、彼女の学校は違ったみたい。
真っ白で、ステッチが薄いグレーのセーラー服だった。

「あ、パナさん… こんにちは」
「あ、ソニーさん…」

俺は何も言葉を繋ぐことができなかった。ホントにヘタレだわ(笑)

何とか背後をごまかし、俺はソニーさんを連れて外に出た。

いわゆる散歩だね。


俺は、彼女と並んで歩ける幸せに、ちょっと舞い上がってたみたいだ。

まさかこんなとこで

まさかソニーさんと…

俺たちは肩を並べて、せせらぎに沿って当てもなく歩いた。
会話は世間話の範疇を超えない。

次第に二人が無口になっていく。

だめじゃん こんなことでは…

マッキーはともかく、あの鋭い甲斐名都を振り切って来たんだ。なんとか少しでもソニーさんと進展しなきゃ…って気ばかり焦ってね。

気付くと、彼女が立ち止まってた。
俺は振り返って彼女を見た。

「パナさんって、モテモテ男子なんですね?」

そう照れたように笑って彼女が呟いた瞬間、俺は首が千切れるほど左右に振った。

「な訳ないでしょっ てかソニーさんのほうこそ、こんなに可愛いのにモテモテでしょう?」



ん?

俺、余計な事言っちゃったかも… 後悔先に立たず、だ。

彼女の表情が暗くなったのが分かったんで。


「そんなことないですよ。ほら、私振られちゃったじゃないですか。ラジオのリクエストメッセージでそう読まれたんですけど?」

悪戯っぽく微笑んだ彼女がそう告げた時、俺はマジで後悔したんだよね。

なんだろ
マッキーや甲斐名都、そして調理同好会のメンバーの事なんて、その瞬間は一切脳裏に浮かばなかった。

もうバレバレだけど
俺はソニーさんに気持ち持ってかれてたんだよ。

こんな気持ち、初めてさ。

続く





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