深淵の中の蝶
- カテゴリ:自作小説
- 2025/01/21 00:36:08
第二十六章
カラーし始めて、40程だろうか…私は今迄の私ではなく大成功のイメチェンに驚いていた。最後に微調整のカットをし始めた悠さんは、「由佳里さん、良い感じに大イメチェンしましたね、すげー似合ってます!」…綺麗な透明感のあるパープルカラーに私はなんだかソワソワしたが、彼の美的センスに驚きしか無かった。「ありがとう、何だか自分が自分じゃないみたいに感じる…」…「大分イメチェンしましたもんね」と話しながらカットしている彼の真剣な眼差しだ。その真剣な眼差しが私には新鮮でとても素敵に見えた。髪の毛を触る事が本当に好きなのだろうな、と直ぐに分かる程には彼の真剣さは伝わってくる。私にとってはだが、とても心地の良い時間だ。…「少しばかりっすけど、前下がりなボブにしてみました!由佳里さんにすげー似合ってます!こんな感じで如何っすかね?」出来上がった髪型やカラーに私は「凄いね、なんだか気恥ずかしい気もするけど、似合ってるかな?」…「すっげー由佳里さんに似合ってます!自分でいうのも変かもしんねーんすけど、上出来っす!」と楽しそうに笑っていた。彼の笑顔は私を「幸せ」だと思わせてくれる。背後から、合わせ鏡をして私に見せてくれた。とても綺麗にカットされた髪や店内の電気でもすぐに分かる程の透明感のあるパープルカラーに私は「凄く綺麗、ありがとう」と伝え、「お疲れ様でした」と彼に言われつつ、…なんだかあっという間に終わっちゃったなぁなんて考えつつも、「ありがとう」と伝え、席を立った。お会計へと促される儘に「由佳里さん、今日はありがとうございます!…なんか、すげー楽しかったっす!良かったらまた来て下さい!」…「うん、ありがとう」彼へと伝えつつお会計も済ませ、「ありがとうございます!」そう見送ってくれた彼は外へと出る私の前のドアを開け、小さな声で「今日の夜も一緒に飯食いましょうね」とにこやかに囁いてくれた。私には何だか「特別感」を覚え、嬉しくなり「うん」と彼に応えるかのように笑顔で店を出た。車に戻った私はバッグから鏡を取り出し、自分をまじまじと見つめた。いつもの私とは違う私に何だか、楽しかったなと思い今日の夜の約束も出来た事に嬉しさを隠しきれなかった。今日は私の部屋だったな、なんて思いを馳せ、帰路へと着くことにした。