【小説】友達の扉 上田海斗君視点 その⑦ 放課後
- カテゴリ:自作小説
- 2025/01/21 22:01:27
ーーーー放課後
みんなが帰っていく。
市原は、自分の席に座ったまま、グラウンドを見ていた。
そっと、市原の横顔を覗いてみると、羨ましそうな、寂しそうな、かなしそうな顔をしていた。
今の状態って、辛いんだろうな。。。。。
中学の頃の市原もこんな感じだったのかな。
市原は、友達と笑ころげてるほうが似合ってるよな。。。。。
ツカツカ!
げっ!薫子先生だ!!
放課後の教室になんの用事があるんだよ!
薫子先生は市原の横に立ち止まった。
嫌な予感がした。
「その髪じゃ友達の一人もできないでしょw」
わざわざそんなことを言いに来たのか!?
市原が振り向くのが早いか、オレが怒鳴ったのが早いか。
「薫子先生がそんなんだから、誰も市原と友達になれないんだろ!」
「また、あなたなの?」
薫子先生は、呆れた顔でオレに話しかけてきた。
「私はね、私のクラスに茶髪の人がいるなんて、耐えられないのよ。」
「私はこのクラスを学年一にしたいのよ。成績の面でも、生活の面でも。」
オレは薫子先生の言うことが、うっとおしかった。
そんなオレに薫子先生は笑顔で話し続けた。
「あなたには、期待しているのよ。学年トップの成績だし、外見も優等生だし。」
テメーなんかに期待されたくねーよ。
「市原さんに関わるのは、おやめなさい。」
オレは、カチンときた。
「学年一のクラスってなんだよ!」
オレは、薫子先生をにらみつけた。
「あなたのせいで苦しんでいる生徒がいるのに、」
「学年一のクラスもへったくれもないだろ!」
オレは今にも薫子先生に殴りかかる勢いだった。
「上田君!やめて!」
市原の声に、オレはハッとした。
オレは市原に言った。
「市原、おまえ、このままでいいのかよ!」
「薫子先生の態度が変わらない限り、ずっと、ひとりぼっちだぞ!」
「いいの。。。。ううん、よくないけど、いいの。」
「上田君が私の為に怒らないでいいの。」
市原。。。。。。。
(へんに関わると、私たちまで薫子先生ににらまれるわ。)
教室に残っていた人たちは、その様子をただ遠巻きにみているだけだった。
その様子に気が付いたオレは、そのクラスメートたちにも怒りを覚えた。
「おまえら、クラスメートだろ!」
「もし自分が市原の立場だったら、どうするんだよ!」
オレの怒りを逆立てするように、クラスメートの一人がぼそっと言った。
「そんな髪してるほうが、悪いんだろ。」
薫子先生は、怒りが頂点に来てるオレの肩を不用意につかんできた。
「あなたも少しは賢くなりなさい。」
「今謝って、今後一切市原さんと関わらないと誓うなら、今日のことはなかったことにしてあげます。」
「薫子先生!あなたっていう人はーーーーーーー!」
オレは薫子先生を殴ろうとした。
「だめっーーーーーー!!!!」
市原の細い手がオレを握りしめた。。。。。
「私、髪染めてきます!ストレートにしてきます!だからーーーーー!」
市原の目から涙がポロポロこぼれてそのあとは、言葉になってなかった。
くそっ!なんで市原だけがこんな目に合うんだよ!。
「市原!おまえがそんなことする必要はないんだぜ!」
「間違っているのは薫子先生のほうなんだから!」
オレは市原の腕を両方つかみ、身体をゆすって、そういった。
薫子先生は勝ち誇ったように
「市原さん明日までにちゃんとしてきなさいよ。」
と言い残して、職寝室に戻っていた。
いつまでも泣き止まない市原。。。。
オレは市原の頭をなでながら
「市原、オレ、おまえのその髪、好きだぜ。」
というのが精一杯だった。
「ありがとう。。。私帰るね。。。。」
そういって市原は帰って行った。
市原の奴、本当に髪、染めてくるつもりかよ。。。。
(つづく)