深淵の中の蝶
- カテゴリ:自作小説
- 2025/01/22 23:30:36
第二十七章
帰宅してからの私は楽しい気持ちを抑えられずに、鼻歌まで歌ってしまっていた。…今日は本当に楽しかった。心躍りながらも悠さんの帰りを待ち侘び今日は何を食べるんだっけと考えていた。兎に角楽しかった私は食事の事等すっかりと忘れてしまったかの様にドレッサー越しの私自身を見つめにやけてしまう。少し落ち着こうと思った私は日記を書き始めた。今日はどんな1日だったか、思い出しつつ浮かんでくる事柄を文字にし始めた。相変わらずの最終的には「悠さんが好きだ」となってしまうのだが、今日は「嫉妬」もしてしまった日でもある。少しづつ冷静さを取り戻しつつある私の日常に初めて「嫉妬をした」他の女性と話している彼に対し、「私だけを見て欲しい」なんて思ってしまった。…そんな事を望んでしまった私は何故だか嫌になる始末だ。…まぁ、仕方ない感情なのかな、なんて思ったが私が私に嫌悪感を覚えるのは久しぶりの感覚だった。陰の力に引っ張られそうになる…そんな時、部屋のインターホンが鳴った。時刻は19時半を廻っている頃だった。悠さんとの約束の時間は確か20時だったはずだが…。何か荷物でも届いたのかとふと我に返り、玄関先へと向かう。モニターには悠さんが映っていた。…どうしたのだろう?そんな事を考えなが、…「はい」と返事をした。…「こんばんは、悠です。大分早いんすけど、由佳里さんと飯早く食いたいなって思っちゃいまして…ご迷惑でしたかね…?」…「あ、ううん全然だよ、今出るね」…「あ、うす」私は玄関へと向かい、ドアを開けた。「いらっしゃい、上がって」…「ありがとうございます」…玄関先でそんな会話から始まる。
ドアを開けると、彼は何だか楽しそうに「こんばんは、なんかすんません…すげー早くに来ちゃって」…「ううん、上がって」…「お邪魔します」沢山の食材を持って彼はいつも通りに来てくれた。まぁ、いつもとは少し早目の時間だったのだが。…「今日はありがとう、とても素敵にして貰っちゃった」と彼へと伝える。…「いやいや、こちらこそっす!由佳里さんの大イメチェンすげー楽しかったっす!」彼はにこやかに今日の事を話してくれた。「こちらこそ、ありがとう、凄く新鮮な感じで楽しかったよ」と伝えると彼は嬉しそうに笑ってくれた。…「今日は何を食べるんだったけ?」と、私は彼に尋ねた。…「今日は…実は寿司買って来たんす」…「えぇ?お寿司!?」と私は驚いてしまった。「どうしてお寿司なの?」と不思議に感じた私は彼に尋ねる。…「今日は由佳里さんが来てくれたって事で何か、嬉しくなっちゃって」と笑顔で答えてくれる。…「うわぁ、凄く嬉しいよ、ありがとう」…「いえいえ、色んな意味でお祝いっすね!」…「ふふ、お祝いだなんて…でもありがとう」そんな何気ない会話が続く中、「由佳里さん、腹減ってますか?」…「そうだね、少し」…「良かったっす、少しでも食べれるならお祝い寿司食いましょ!」そう言って、彼は大きな袋からお寿司を取り出した。いつも通りな様で何だかいつもとは違う食事を今日は楽しむことになった。