深淵の中の蝶
- カテゴリ:自作小説
- 2025/01/26 09:27:25
第二十八章
お寿司を二人して食べる日が来ようとは思ってもいなかった私に、彼は「由佳里さんと寿司食えるとは思ってなかったっす」と楽しそうに笑う彼の笑顔がとても愛しく思えた。…「私もそう思ってたよ」なんとも優しい時間が流れていく感覚。…「食いましょう!寿司!」…「そうだね、食べようか、お茶入れて来るね、座って待ってて」…「おっす!あざす!」私はお寿司のお供にはお茶という定番のチョイスをし、お湯を沸かし始めた。お湯が沸くまで、一緒に煙草でも吸おうと思い立った私は、「悠さん?一緒に煙草でも吸おうか」と誘ってみる事にした。彼は…「いーっすね、ベランダっすか!?」…「部屋で良いよ」とキッチンにあった灰皿を持って彼の正面に座った。…「お湯が沸くまで煙草吸おう」…「おす」…「あの、由佳里さん…言い辛いんすけど…由佳里さん抱き締めさせて貰えたりしますか?」二つ返事で私は「うん」と答えた。お湯が沸くまでのほんの数分。彼は私の背後へと回り、私を優しく包み込む様に抱き締めてくれた。二人して、煙草へと火を点け、煙がゆらゆらと揺れる中でお互いのペースで煙草を吸う、とても心地が良い。悠さんに抱き締めて貰うと私は安心感さえ覚える。煙草の煙が二人を包む頃、お湯の沸く音がしていた。…「さ、お湯も沸いたしお寿司にしようか」彼は「そうっすね」と柔らかく包んでくれていた腕を離してくれた。悠さんとこんな風に夕食を取る事が当たり前の日常になってから、既に季節は秋の始まりを迎える頃になっていた。相も変わらず、悠さんとの夕食は続いていた。そんな日常の中で、久しぶりに兄と慕っている人から連絡が来ていた。「元気にしてるか?」そんなメッセージだった。私は孤児だ。兄には幼い頃から良くして貰っている。「蓮兄ぃ、久しぶり、私は元気だよ」そうメッセージを返し、「そうか、良かった、久しぶりに飯でも一緒に食うか」と蓮兄ぃからの誘いがあった。
「良いね、蓮兄ぃの近況も聞きたいし」と私はメッセージを送っていた。「いつが予定空いてる?」と問われ、「お昼頃ならいつでも大丈夫だよ」と蓮兄ぃへと送り返し、「それじゃあ、明後日とかどうだ?」と聞かれ、「うん、分かった明後日の13時辺り空いてる?」と聞き、「おう、それじゃあいつもの店で待ち合わせるか」と蓮兄ぃと約束をし、その日は終わろうとしていた。今日も悠さんとは食事をし、いつもの様に抱き締め合い、彼は自分の部屋へと帰っていた。…「蓮兄ぃ、久しぶりだなぁ」としみじみと昔を思い出したりしながら、私は眠りに付こうと薬を飲み、優しい香りの香水を纏い、ベッドへと潜り込んだ。明後日の蓮兄ぃとの約束に「元気かなぁ、蓮兄ぃ」と呟いた私はすんなりと眠りへと落ちて行った。
3人目が現れましたね
お兄さん的存在だし 良い方向へ行くのか
それとも 関係を反対されたりしちゃうのか
違う意味でのドキドキも混ざってきました
どうなるのかな
1日1日は長く感じるのに 振り返ると季節が変わっていることありますよね
二人の幸せを願いつつ 続きをゆっくり待っています
紫音さんのペースでお話勧めてくださいね
いつもありがとうございます(*・ω・)*_ _)ペコリ