春菊の天ぷら
- カテゴリ:日記
- 2025/02/02 02:09:43
なぜかたまに、食べたくなる。野草の天ぷら。
亡くなった母が揚げ物が好きで、料理のレパートリーが尽きてくると、庭に出て野草を摘んできて、天ぷらにしていた。
熱を出した時には、ユキノシタの天ぷら。
冬には買ってきた春菊を揚げて、
春にはドクダミの若い葉を。
ヨモギが見つかったらちょっと得意げ。
種を蒔いておいたモロヘイヤや、ツルムラサキ。
しゃくしゃくしたのに、ちょっと塩をふる。
ほかによく作っていたのは、ごぼうと納豆の天ぷら。わたしはこれが苦手で、
出されると、逃げていた。
匂いがちょっと耐えられなくて。
蒸した大根に衣をつけて揚げるのも、よく出されたけど、これも苦手で、
衣を全部はぎ取って、中身の大根だけ食べていた。
怒られたけど、体がかゆくなるので、どうしてもダメだった。
そのうち、母の物忘れが目立つようになってきて、
一週間ずっと天ぷらを出され続けた。
気持ち悪くなって、食べずにインスタントの味噌汁とか食べていたけど、
わたしが食べていない事には全然気が付いていなかった。
デイケアとか、行くようにしてもらって、
文句をぎゃあぎゃあ言われて、でも、
「一緒にお祈りしようね」
と、朝、聖書を読んで、祈る時間を取っていたら、
なんとなく、落ち着いてくれた。
誤嚥性肺炎になって入院して、そのあと施設に入って、一気に年を取ってしまったけれど、
「お祈りしてる?」と尋ねると、「祈ってるよ。ずっと祈ってるよ」
何の祈りだったのか。
何を祈ってくれていたのか。
思い出すのは、まなざし。声が出なくなって、でも、
しぼりだすように。祈ってるよ、と言ってくれた。
あんたのために、祈ってるからね、と。
明日は、春菊の天ぷらを作ろう。
しゃくしゃくしたのに、お塩をふって食べよう。