お裾分け、お福分け(続々)
- カテゴリ:日記
- 2025/02/17 22:17:35
ネットで検索していたら、マスコミの記事もありました。
「お裾分け」の使い方、やっぱり複雑な話です。
・NHK放送文化研究所(2024年2月1日)
https://www.nhk.or.jp/bunken/research/kotoba/20240201_3.html
・毎日ことばplus 毎日新聞校閲センター(2020年03月10日)
https://salon.mainichi-kotoba.jp/archives/51493
・朝日新聞「ことばの広場」2015年7月8日付の記事
http://www.asahi.com/special/kotoba/danwa/SDI201508039427.html
論点は2つ。
①もらったもの以外でも「お裾分け」という言葉を使っていいか?
(自分で買ったもの、とれた野菜や果実、作った料理など)
②「お裾分け」という言葉を使うのは失礼か?
NHKの記事は①について。朝日新聞の記事は②について、
そして毎日新聞の記事は①と②の両方に触れている。
まず、①もらったもの以外でも「お裾分け」という言葉を使っていいか?
毎日新聞の用語集では、本来の意味に沿って
「頂き物」を分ける場合に限定しているらしい。
一方、NHKでは、
「『到来物』を分けて贈る意味が伝統的なのかもしれないが」としつつ、
今はそれ以外でも使う人が多いことを踏まえ、
それも「誤りとはいえないのかもしれない」としている。
NHKも毎日新聞も、まず辞書を調べているのだが、ほとんどの辞書に
「もらいものや利益を、さらに他の者に分け与えること」と書いてある。
「もらいもの」と「利益」を分けて書いてあるということは、
広く「もらいものではない利益」の場合も使うということだ。
毎日新聞はさらに、
作りすぎたおかずを近所に「お裾分け」…という使い方を取り上げ、
違和感を感じるかどうかアンケートを取っている。結果は、
・特に違和感はない 51.9%
・違和感はあるが、許容範囲 29.7%
・違和感があり、言い換えたい 18.4%
半数強が「違和感はない」、「許容範囲」を含めれば8割強が許容している。
毎日新聞は「本来の意味」にこだわって「頂き物」に限定しているのだが、
今では多くの辞書や一般の人たちが頂き物に限定しない使い方を許容しており、
さらに「幸せのお裾分け」のような表現も広く使われようになっているので、
「『本来はもらいものを指す言葉だから言い換えよう』とは
ますますしにくくなっているのが現状」…と締めくくっている。
次に、②「お裾分け」という言葉を使うのは失礼か?
これは「裾」がマイナスの意味を持つ場合があるから問題になるのだが…
朝日新聞の記事は、
まず江戸後期の「譬喩尽」という書物に
「お裾分け」は「失礼なり」と書かれていることを挙げている。
しかし続けて、国語学の専門家の話として、室町後期~江戸初期の文献では、
目上または同輩に「すそわけ」という言葉を使っている例があり、
「当時は身分の上下に関係なく使ったとも考えられる」とのこと。
そして「譬喩尽」には「但し貰ふ方は随分よろしき詞なり」という
続きがあることも紹介している。
毎日新聞の記事は、
一般の辞書や用語集では「目上の人に差し上げるときに使うのは避ける」
と書かれていることがあるとしつつ、この記者個人の考えとして
「相手に対して恵んでやるという態度でものを渡すのではない限り、
身分の差を含んだ原義が薄れた現代の用法として、
目上の人への善意の『お裾分け』」も認めていいのではないか。
気になる方は『お分けする』などと言い換えるか、『お福分け』を使うといい」
とまとめている。
「天皇陛下にお裾分けする」とはさすがに言わないと思うけど、
いいものをもらえば誰だってうれしいのだから、
贈り主から「お裾分け」と言われても怒らないのではないかな…
今回、いろいろ調べてみた感じでは、「お裾分け」という言葉は、
もらう側の方が喜んで使って、社会に広がった…という気がする。
「お裾分け」という言葉、もしかしたら、もらう方が遠慮しなくてもいいように、
むしろ、へりくだる意味で「裾」と言ったのかもと思ったのですが、
そういう歴史はなさそうです。
ことさら失礼なんて考えずに、
私も普通に「お裾分け」でいいのではないかと思います。
本来の意味とは違う意味で定着している言葉も多いですよね。
言葉は生き物で、意味も使い方も変わっていくことがあって、
それに合わせて辞書の説明も変わっていきます。
みんなが違和感なく使っていれば、それが正しいことになるのですが、
本来の意味や使われ方、歴史的な変化などを調べるのも面白いものです。
「お裾分け」確かに、貰ったものでなくても使う事にあまり違和感ないとは思うし、そんなに失礼な言葉とも感じてないです。でもやっぱり、目上の人に対しては抵抗があるかも。
そそ、分けて貰って嬉しい気持ちを込めて「お裾分け♪」(幸せをお裾分けして貰ったという意味が込められているような…)と貰った側が使っていったような気がします。
以前、種から育てたパンジーの苗が山ほどになり、近所の人に貰ってもらったことがあったのだけど、その時も「お裾分け~」と言って渡した覚えがあります。今思えば、ちょっと押しつけがましかったかな、と(^^;
>自分で買ったもの、とれた野菜や果実、作った料理など
たとえば、これをお裾分けと言わないようにすると…何と言えばいいんだろう…。
まあ、普通に「うちでとれた野菜です、お分けしますね!」でいいのかも知れないけど、私的にはこの言い方より「これ、お裾分けです」の方が柔らかく感じます。
でも、これからは「お福分けです」って言うようにしてみようかと、小遊星さんの記事を読んで思いました。
言葉には、その土地の文化、風習がたっぷり詰まっているものですね(o´∪`o)