Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


最期の夜月

第七章

鏡と対峙し、新たな私の発見をした後に、寝室を覗くとすっかりと眠りへと入っている様子の彼がいた。彼は右側に身体を縮めるかの様に小さく丸まって眠っていた様子に私は、ホッとし、左側へと向かい彼に背を向け身体が触れない距離感を取りつつ、ベッドへと静かに入って行った。…明日はどうするのだろうか…と寝室にも置いてある煙草に手が伸びそうになった私だが、…流石に寝室はマズいか…とふと我に返り、眠りへとすんなりと落ちていく私が居る事に驚きを翌日に感じたのは言うまでもない事だった。
私が目を覚ましたのは、すっかりと夕方の時刻になろうとしていた。時計をぼんやりと眺めると、18時を少し過ぎた辺りの時刻になっていた。…少し、身体が動き辛い…?と寝惚けている頭で、自分の身体を覗いてみることにした。かろうじて、ベッドの上に出ていた腕で軽く掛布団を捲ると、華奢な腕が私の身体を覆う様に乗っていた。私はぼーっと…えっと昨日は…と考える様に煙草へと手が伸び、火を点けぼんやりと頭の中を整理して行く。…あぁ、そうか…肇さんが一緒にいるんだったな…と咥え煙草を消した。彼はまだ夢の中にいるらしく、…「うぅうん…」と何かしらに魘される様に眠っていた。…確か、恋人に…と昨夜の事を考えながら、消した後の煙が立ち込める部屋を眺めながら、肇さん、辛いだろうな…としみじみと考えざるを得なかった私だ。私は、そっと彼の腕を私の身体から解く様にそれと同時に彼を起こすことの無いように、離れ静かに寝室から出る事になった。…兎に角煙草を吸おう…私にとっては当たり前の「日常」を過ごそうと必死になって居た。
…肇さんはこれからどうするのだろう…そんな事を考えながら、煙草を1本取り出し、安っぽいライターで火を点けた。…しかしながらに、良くあんな長時間も座り続けて居られたな…それに、肇さんの恋人…最低過ぎないか…?とぐるぐると思考が回り始める。私は少しばかり、肇さんの「元」恋人への怒気を感じながら…よくもまぁ、あんな肌寒い外へと出て行った彼を放置出来たもんだな…と顔も知らない肇さんの「元」恋人の事を考えていた。…いや、ほんとに「人として」どうなんだ…と止まらない思考と煙草にふと気付き…今は取り敢えず、肇さんに朝食の支度でもするか、と頭を切り替え何か食べれる物あったっけ…とキッチン周りの扉を開け始めた。乾麺がいくつかあるのを見付け…うどんか…と次に冷凍庫を漁る。母から送られてきていた山菜等が見つかった。…お、山菜だ…でも、うどんに山菜…?と疑問が浮かんだが、…この際、「山菜そば」ではなく「山菜うどん」にしよう…と思い直し、作り始める事にした。…肇さん、いつ頃起きてくるかな…もう作ってても大丈夫だろうか…キッチンに置かれたうどんと冷凍されている山菜を眺めつつ…煙草へと手が伸びていた。…取り敢えず、顔でも洗ってこよう、と煙草の火を消し洗顔をしに洗面台へと向かった。洗顔を終え、歯磨きをし始めた頃何だか寝室から物音が聞こえた気がした私は、こっそりと覗く様に寝室の方へと身体を動かした。そこにはぼーっと立っている肇さんがいた。彼は私に目をゆっくりと向けると…「あ、おはようございます…美月さん…」とムニャムニャと意識ははっきりしている様子だった。




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