ネタばれ読書日記『法医学教室のアリーチェ』
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/03/15 19:31:55
『法医学教室のアリーチェ 残酷な偶然』著アレッシア・ガッゾーラ
評価★0/5
内容
ドジで泣き虫だが若くて可愛い法医学医師の卵のアリーチェの優雅な生活とちょっと犯罪事件。
【感想】
ドラマ版は脚本家さんが話を再構成し、多分可愛い女優さんが演じているだろうから面白いだろう。
ドラマ化もされている作品と訳者あとがきに書かれていたが、小説はどうしようもない駄作だと思う。出版社が付けたと思しきタイトルはミステリ風だけど作者はミステリ風味の恋愛コメディとか言っている。確かに主人公アリーチェに事件を解決しようとする意志が無く物語がだらだら続き400ページ以上!!?
まず、この作品で一番駄目なのが「文章」、ほとんどが現在形で過去形が使用されていない。どこかにあるかもしれないが再読する気にもなれない。
例として冒頭の文章から拾い上げてみると、
~思い出す。確信している。【改行】かん違いしている。~などいない。~ではない。~のだから。~悪い。~ではない。~可能性はない。【改行】
こんな文章がだらだらと400ページ。翻訳ミスとは思えないから原作がこんな文章なんだろう。
緊迫感のある描写の上手な作家さんは現在形(現在進行形含む)と過去形の織り交ぜ方が上手いと思う。しかし「アリーチェ」は現在形しかないため殺人事件が起ころうが、恋人と破綻しようが、文章が宙に浮いたようなふわふわした感じがしてまったく感情移入できない。
ストーリーに言及すると、昔読んだ『なんとなくクリスタル』と『女子大生会計士の事件簿』を思い出した。どちらも日本のヒット作でどちらも若くて可愛い女子大生を主人公にしているが、前者はバブルな女子大生の生活を描き、後者は浅く楽しく専門職の知識を解説することで、読者の好奇心と知識欲を満たしてくれる。しかし深い感動を読者に与えるかと言われれば否である。しかし『クリスタル』は中編、『会計士』は短編集だから、400ページ超えの「アリーチェ」に比べれば良心的で読みやすい。
「アリーチェ」は学資ローンを抱えているような記載はあるが、節約は無く、友人や恋人と外食や遊興を楽しみ。思い出したかのように仕事をする。(ここで法医学の知識がこまごまと書かれるがもう頭に入らない)ラスト付近では仕事を休み、事件を放置して恋人を追ってスーダンまで行ってしまう。直前に旅行会社の人に「お金がかかるけど早く入国できる方法」について解説されておりそれを実行している。そして一週間も滞在。
計算できないけどどうしても旅行費用がどうなっているのか気になる。
殺人事件の決定的な証拠を犯人に突き詰めることも無く、表向き事件は未解決になります。担当の刑事さんがあっさり犯人逮捕をあきらめているのも納得できない。