コシフリ草を求めてボディコニアン
- カテゴリ:自作小説
- 2025/04/10 06:52:11
「そもそも「コシフリ草」ってどんな草なんだ?まさか、いつも腰をクネクネさせてる草じゃあないよな?」
「トリオンさん!ご明察ですぅ~!どうして、分かったんですかぁ?」
看護兵のマリアの言葉を聞いて、トリオン隊長は思わずズッコケそうになった。
「その『コシフリ草』ってのは、足が生えてて勝手に動いたりしないよな?」
「そうですよ~、シンジローさん。ハニートラップダイコンやマンドラニンジンと同じですね~。
私の実家の農園ではコシフリ草がハニートラップダイコンやマンドラニンジンのまわりを走り回ってましたよ~」
「…そんな情報はいらん」
シンジローは青ざめつつもチュニスにツッコんだ。
「まぁ!コシフリ草ちゃんったら!それは私に対する挑戦状ね!?負けないわよ~ん♡」
タンゴはフサフサのファーがついた扇子を振りながら腰をくねらせた。
「ミラーボールとお立ち台がないのが残念ね~♡あら?」
いつの間にか、コシフリ草たちがタンゴのまわりに集まってきていた。
ミラーボールとお立ち台が用意され、ザギン山の雪深い森の中にあっという間にダンスフロアが出来上がる。
DJの恰好をしたコシフリ草がゴキゲンなミュージックを流し、ターンテーブルをスクラッチする。
「あら、やだ♡分かってるじゃな~い♡コシフリ草ちゃんたち♡一緒に踊りましょ♡レッツ・ダンシ~ング♡」
コシフリ草たちは、どこからともなくファー付き扇子を取り出し、扇子を振りながら腰をクネクネさせ始めた!
「いや~ん♡タンゴちゃんばっかりズル~イ♡アタシもお立ち台クイーンになる~♡」
アニスもお立ち台に立って、ボディコンダンスに加わった。
「おおっ!これが「ジュリアナ東京」ってやつですかぁ~!メッチャ、バブリーですぅ~!
…って、あれ?あれれ?わ、私も踊るんですかぁ?」
マリアはのん気に感想を述べていたが、コシフリ草にファー付き扇子を持たされ、ダンスに参加させられた。
「俺には、ついていけん世界だ…」
そうつぶやくシンジローの横で、トリオンがうんうんと頷いていた。
ともあれ、コシフリ草が手に入り、材料が揃った。
ザギン山から下山し、イカリ食堂に戻り「コシ・ナオール」を調合する。
「出来た~!/出来ましたぁ~!」
程なくして、チュニスとマリアは「コシ・ナオール」を完成させた。
「さぁ、食べてみてよ~!/食べてみて下さい~!」
(なんで、ミスター味っ子!?)心の中でツッコミを入れるトリオンとシンジロー。
「良薬、口に苦しっていうくらいだからなぁ、味の方は…」
ドハツは少し不安そうにしながら「コシ・ナオール」を飲んだ。
「こ、これは…っ!素晴らしく…う~ま~い~ぞ~!!」
お遍路さんになったドハツは「コシ・ナオール」の材料たちを伴い、味巡礼の旅に出ていた。
「コシフリ草、コシク茸、スウェール・オ・キューブ…。
たしかに、どれも薬効は高いが、味も匂いも癖が強すぎて、そのままでは とても食べられたものではない…!
だが!しかし!
リョウヤクリンゴが、個性の強い三者を優しく包み込んで、さらに効能を高めている!
そのうえ、後味を爽やかなものにしている…!
これは!?この温かさは!温もりは!「スウェール・オ・キューブ」の効果か!?
薬の成分が!お灸を据えたように優しくじんわりと!腰の隅々まで沁みわたっていく…!
おお!その快楽たるや、まさに!天にも昇る心地良さ…!」
お遍路ドハツは、あまりの心地良さに極楽浄土に導かれ、昇天していくのだった…!
「ハッ!? 腰がッ!!治ったァァーッ!!!」
イカリ食堂の店主「ドハツ・テン」は、サタデーナイトフィーバーの指差しポーズをしながら叫んでいた。
「アンタ!」「父ちゃん!」「マリシ!キッショウ!心配かけたな!ほら!この通り!もう大丈夫だ!」
「ありがとうよ!メンドーサ隊!それと、キッショウ。よくメンドーサ隊を呼んできてくれたな」
ドハツの武骨な手が、キッショウの頭を撫でる。
「さて、ドハツの腰痛も治ったことだし、俺っちは、そろそろ ウェルカム王国に戻るとするかな?」
アライグマ族の郵便配達員「アライ・フミオ」は、郵便局の帽子を被って、食堂の席を立とうとした。
「待ちねぇ!郵便屋!帰る前に、ここで飯食って行きねぇ!」
「おう、定食屋!お言葉に甘えて、そうさせてもらうわ」
『ボッコロ・バレンタインデーまつり』が終わり、
まつり帰りの人達が続々とイカリ食堂にやってきて、店の中は、すぐに満席になった。
「ぼぅ、女の子からチョコレートをいっぱいもらったの~!今日はチョコの日なの?」
「リリちゃんは、男の子から赤いバラの花をもらってたの~!」
「オレがイケてるって?そんなことは!当たり前!当たり前!当たり前~!」
「キャ~♡ロザン・ブライト様~♡」「ステキ~♡」「痺れる~♡」
ロザンガールの一人が、ロザンにメロメロになりすぎて、目をハートにしたまま、気絶して倒れた。
「ドウコ様~♡」
「みんな!今日は僕のためにチョコをどうもありがとう!キミたちの愛は確かに受け取ったよ!
これは、僕からのささやかな礼さ!受け取っておくれ!」
フレンチ王子様イケメン「ドウコ・シモナカ」が、ターンしてキザなポーズを決め、指をパチンと鳴らすと、
ドウコファンの女の子たちの胸元に赤いバラが咲いた。
「ロキ、モテモテ!ヨリドリ・ミドリ!ヒクテ・アマタ!キケンナ・ヒアソビ!」
白猫人族の女児「アリア・ファーレンハイト」は、無邪気に復唱してロキのまわりを跳ね回っていた。
「ロキ様~♡」「ロキちゃん♡」「ロキ♡」
マカマカイの貴公子「ロキ・ミザール・アルコル」は、
『ヨリドリ・ミドリ』『ヒクテ・アマタ』『キケンナ・ヒアソビ』のギャル系魔族トリオに囲まれてご満悦。
「あら、ロキさん!ロキさんも「ボッコロ・バレンタインデーまつり」に来てたんですかぁ~」
「やぁ、マリア!」
ロキはマリアを抱き寄せると、マリアのナースキャップの横で指をパチンと鳴らして、赤いバラを飾る。
「この赤いバラは愛の印であり、招待状さ。今宵、私の屋敷で甘いひとときを…」
「ロキくん!こっちへいらっしゃい!」
「ユ、ユミコ!? コラ!やめろ!そんなに引っ張るな~!マントが伸びる~!」
ロキは、自身の妻「ユミコ・ムラサメ」に引っ張られ、店の外に出ていった。