Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


最期の夜月

十七章

ドライヤーしている彼を見つめつつ、私は煙草を吸っていた。…流石両方行けると言っていただけはあって、とても中性的に魅力がある人だなぁ…とぼんやりと考えていた。…「なんか恥ずかしいよ、美月さん…はは」と照れたように笑う彼に、…「あはは…ごめんごめん」と、私まで笑ってしまっていた。…「ゆっくり乾かしてきてね」と伝え、彼を見つめるのを止めて、私はリビングへと向かった。…さぁてと、煙草でも吸お…とテーブルに置かれていた煙草を手に取り、灰皿とライターを持ってキッチンへと向かった。キッチンは私が家にいる間はほぼ当たり前の様に換気扇が回っていた。私は何気なく煙草を取り出し、火を点けて煙草を吸う。そんな時間がとても好きだった。スティルの香りもとても心地よく感じる程に良い香りだ。…少しだけ、香りと煙を楽しもう…そう思いながら、白湯を入れ始めた。…あ、そうだ…肇さんも白湯とか飲むかな…と考えつつ、…ちょっと聞いてみよう…と寝室へと向かい、…「肇さん?お白湯入れようと思ってるんだけど、一緒に飲む?」と尋ねた。彼はドライヤーの手を止め、…「お白湯!良いね!飲みたいかも!」と楽し気に笑う。…「分かった、それじゃあ入れて来るからゆっくり髪乾かしてて」と寝室の入り口辺りで言葉を交わし合い、私はキッチンへと向かった。キッチンへと戻ると吸いかけの煙草に、また火を点け2人分にしては少々多めの水をケトルへと入れ、沸かし始めた。…煙草美味しいなぁ…としみじみと感じながらも呼吸に集中するかの様に煙草だけに考えを持って行く。肺一杯に煙を吸い込み、一旦身体に取り入れたのを確認しつつ、ゆっくりと煙を吐き出していく。この、何でもない呼吸が私には必要な時間だった。ゆっくりと煙の呼吸を楽しんでいる間にケトルがお湯になった事を知らせてくれた。…もう沸いたのか…そんな事を考えながら、2人分のマグカップにお湯、そして水を入れて白湯を作った。そんな時に寝室から彼は出て来ていて…「美月さんー髪乾かしたーありがとうございます」とにこやかに微笑む彼に、…「お、良いタイミング、今お白湯も出来た所」とマグカップをテーブルへと運んでいた私だ。…サラサラな髪だな…となんだか、彼に見惚れてしまいそうになりつつ…「お白湯でも飲もうか」と彼を誘う。…「うん!頂きたいです!」と美しい顔で笑う彼の眼は少しばかり光を宿しているかの様に見えた。…「テーブル、座って」…「あ、うん!」と素直な返事に…可愛らしい人だなぁ…と感心してしまう程だ。…「ありがとう、美月さん」…「どういたしまして」と彼が素直だからか、私も煩わしい言葉を選ばずにすらすらと言葉が流れ出てくる感覚だ。…不思議な魅力のある人だなぁ…と思いながら、2人分のマグカップをテーブルへと移動させていた。…「さ、飲もうか」と2人してテーブルへと腰掛け、…「うん!僕お白湯って初めて飲むかもしれない!」と言っていた。…昨夜の事を覚えていないのか、そんな事を考えていた私だ…「お口に合うと良いんだけどね」と私は彼へと伝え、…「それじゃあ、頂こうか」と声を掛けた。…「うん!」2人でマグカップへと手をかけ、ほぼ同時に…「頂きます」と言葉にしていた。…「同じタイミング…ははは」と2人して笑い合った。2人で飲む白湯が心を解いていくかの様な時間。とても心地良く流れていく時間に、そろそろ4時を廻ろうとしていた時刻に…「肇さん、そろそろ寝ようか」と声を掛けた。…「今日も一緒に寝ようか、どうする?」と聞くと、なんだか申し訳なさそうに…「…そうして貰えると…有難いです」と小さく呟いていた。…「うん、一緒に寝よう」と彼へと伝える。…「さてと、身体も温まったし私歯磨きしてくるよ」と席を立った。…「僕もその後に歯磨きしても良い?」と聞かれた私は…「うん」とにこやかに笑ってみせた。




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