最期の夜月
- カテゴリ:自作小説
- 2025/04/21 00:31:31
第十八章
今夜も一緒に寝る事となった私達だが、昨夜と同様にお互いに背を向け合いそれぞれに寝る事にした。…肇さんは女性に対して「恐怖感」を覚えてはいないだろうか…少しばかり不安は過ったが、恐らくそれは肇さんも似たような事を考えている気がしていた私だ。…「美月さん?…僕が一緒に寝る事、怖いとかない?」…やはり同じ様な事を考えていたんだな…と確信に変わる頃、…「なんでだろうね、肇さんには抵抗がないや」と笑いながら答えた。…「そっか…なら、良かった」そんな言葉を交わし合いながら、…「もう遅い?時間帯だから寝よっか」と彼を誘う。…「うん、ありがとう」と左右に分かれ、お互いにベッドへと潜り込む。…「おやすみ…肇さん、ゆっくり眠ってね」と背中合わせに伝えると…「おやすみなさい…美月さん、ありがとう」と返事が返って来た。私はスティルの香りに酔いながらも眠りへとすんなりと入って行った。翌日、彼がどんな事を思ったかには全く見当もつかない事だった。…「んん…」朝になり、僕は美月さんの声で起きる事となった。驚くべき事に、美月さんも僕も背中合わせに寝ていた筈の体制から、お互いに向き合う形になっていた。僕は美月さんの寝顔を見て…美月さん…凄い顔が綺麗…とまだ起きてくる筈のない時間を過ごしていた。…美月さんって美人さんだな…と暫く見惚れてしまった僕だ。…これはモテる顔立ちだ…とぼんやりと彼女の寝顔を見つめて居た。…しかも優しさまで兼ねそろえてて、とんでもなくモテるんだろう…そんな事を考えながら見つめ続けていた僕だ。…あ、今何時だろ…と寝室の時計を探し始めた。ベッドで横になって居る足元に時計は設置されていた。…7時10分か…まだ時間ある…もう少しだけ美月さんを眺めて居たかった僕は、彼女の顔を眺めつつ、本当に美人さんだな…と暫く見つめ続けていた。そんな時間が20分は続いただろうか…少し煙草でも吸わせて貰おうっと、考えを美月さんから自分へと向け始めた僕は、彼女を起こさない様にそっとベッドから出て、寝室を後にし…えーっと…換気扇…とキッチンへと向かった。…少し煩いかな…んー…ベランダで吸ってこよ…と考え直し、テーブルに置かれてあった灰皿と自分の煙草を持って、ベランダへと向かった。僕にはお気に入りのジッポがある。それも持って来ていた為、その3点を持ってベランダへと出た次第だ。あまり音を立てない様にそっとベランダへと出た僕は煙草を取り出しながら、…今日は暑くなりそうだな…と何となく考えていた。煙草を咥え、ジッポへと火を点けその火を煙草へと移した。咥え煙草の儘煙を身体に取り込む様に息を吸った。…隣のまた一つ隣の部屋…あーあ…もう終わっちゃったんだな…僕は置手紙を書いてきていた。ー僕の荷物を全部捨てて、ここから居なくなって下さい、二度と顔も見たくないですー…そんな事を書いていた様に思う。僕は、アイツを引き摺ったりするのだろうか…そんな事が頭を巡る。…美月さんの朝ご飯の事を考えよう…美味しくオムライス作るぞー…と考えを美月さんへと向ける。…とても素敵な人に出逢ったなぁ…としみじみと感じてしまう。あっという間に咥え煙草の儘一本が終りそうになっていた頃、…あぁ、灰が落ちちゃう…急いで僕は煙草の灰を灰皿へと落とし、…さぁて、切り替えて行きますか…と気合を入れた。部屋へと戻ろうとした時に、寝惚け眼の美月さんが寝室の前で立っていた。時刻は8時半を廻ろうとしていた。