最期の夜月
- カテゴリ:自作小説
- 2025/05/20 14:36:05
第二十五章
…「美月さん、それじゃあ僕バイトの支度しちゃうね」…「うん、分かった」と軽く言葉を交わしながら、彼はいそいそとバイトの支度をし始めた。…邪魔しちゃ悪いな、と思った私は、煙草へと火を点け彼をそっと見守る事にした。…「ちょっと着替えて来るね」と言った彼は寝室へと向かい、着替えを始めたのであろう。10分程で着替えが終わり、寝室から出て来た彼は全身真っ黒な服装になっていた。真っ黒なシャツ、ジーパン、そして柔らかそうな髪。…綺麗…私は彼の姿に見惚れてしまっていた。…「なぁに?美月さん、僕変かな…?」と笑う彼には中性的な魅力が備わっていた。…「ううん、変じゃないよ、寧ろ素敵な感じ」と私は素直な言葉を発していた。…「そ、そうかな?」…「うん!肇さんは黒が良く似合うね」と褒めに褒めていた私だ。…「そろそろ僕バイトに行ってくるね!」と彼は言い、トートバッグに色々と詰め込んでいた。…「うん、気を付けてね」と私は彼を観察しつつ、…「いってらっしゃい」とにこやかに送り出していた。…「うん!行ってきます!」と彼は爽やかに笑い、玄関へと向かって行った。…「あ、そうだ肇さん?バイト終わって帰って来る時にちゃーんと戻って来てね」…私は彼がまた玄関先に待っていない様に釘を刺して言った。…「あ!うん!分かった!ありがとう、美月さん!ちゃんと戻って来るね!」と彼は笑っていた。…「それじゃあ、行ってきます!」と意気揚々にバイトへと向かって行った。…良かった…少しは元気出たかな…彼が帰って来る迄彼の事を考えない時間の無い程に私は彼の事を考え出していた。…兎に角お茶碗でも洗おうかな、と考えを切り替え茶碗を洗い始めた。茶碗を洗い始めた私は…そう言えば、肇さんはバイト何時迄なんだろ…とまた深く深く彼の事を考え始めていた。…聞きそびれちゃったな…と洗い終わった茶碗を拭き、片づけをして行く。一息つきながら私は白湯を入れ、テーブルへと座り、煙草へと火を点けた。時刻はあっという間にお昼近くになろうとしていた。…あ、肇さんはお昼ご飯何食べてるかな…色々と止まらない思考と煙草に私は、買い出しにでも行ってこようかな…と私の彼への思考を止めるかのように、…今日の夕飯、何にしよう…と考え始めた。…ハヤシライスでも作ろっかな…と私はスーパーへと向かう準備をし出した。…兎に角着替えて、買い出し行こ…っと服を選びだす。…何を着て行こうか…私の思考は今買い出しへと向かう服装に集中しだしていた。…んー…これとこれと…と選んでいた服装は全身真っ黒の服装になっていた。…ま、いっか…と服を着替え、スーパーへと向かう事にした。時刻は13時頃になっていた。