休日の朝、目覚まし時計の音もなく自然に目を覚ました佐伯美咲は、久しぶりに何の予定もない一日を満喫しようと決めていた。お気に入りのカフェラテを片手に、ふらりとショッピングモールへ。今日は「絶対に買い物はしない」と心に誓い、ただのんびりとウインドウショッピングを楽しむつもりだった。

新作のワンピースや可愛い雑貨を眺めて歩いていると、ふと視界の端に見慣れたキャラクターが飛び込んできた。思わず足が止まる。――そこには、美咲が長年応援しているアイドルグループの期間限定ポップアップストアが、ひっそりとオープンしていた。

「えっ、うそ……！？」

心臓が跳ねる。店内には、推しの新作アクリルスタンドや、ここでしか手に入らない限定グッズがずらり。理性が「見るだけ」と囁くが、感情は「今しかない！」と叫ぶ。

気づけば美咲は、両手いっぱいにグッズを抱えてレジに並んでいた。財布の紐は、推しの笑顔ひとつで簡単にほどけてしまう。「今日は買い物しないはずだったのに……」と苦笑いしつつも、袋の中のグッズを見て頬が緩む。

帰り道、カフェで戦利品を広げて写真を撮り、SNSにアップ。「推し活は人生のビタミンだ」と呟く美咲の顔には、満ち足りた笑顔が浮かんでいた。