Nicotto Town








むかし愛があった

やさしい想いがあった

このうえなく上品な言葉があった

それらがいつの間にか樹になり

小枝や葉になった


枝を折って中を見ても何も見えない

耳を当てても人の耳には聞こえない

樹はあらゆる方向へ行くかのように伸び

それでいて一歩たりとも動かない

動けないのではなく動かない

風が上の方で樹を歩ませようと躍起になっても

群がる鳥の群れが樹に歌いかけても

樹は静かにじっとそこにいた


知らなければならない

四季を通じて一本の樹であることを

もっと口をつぐみ

じっと見つめることを

人間の言葉を聴き 決して答えないことを

思い続けなければならない

樹は人を包んでいることを

樹は人と同じであることを










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