涙
- カテゴリ:自作小説
- 2025/07/02 21:46:49
私の心の中に
激しく燃え上がる感情
全てを押し流す洪水のときは過ぎた
私は渇き切った広い砂漠を
抱えて歩いている
だが、どこに泉が湧いているかは
知っている
悲しみによって泣くのは
もう耐えられるようになった
泣くための涙が少なくなってから
この世界がどんなに
美しいことに満ちていたか
気付き始めた
年を取るということは
激しい涙を流さなくなることかもしれないが
涙が涸れることにはならない
私の瞼の曇りを洗い流し
鈍くなった心の奥まで光が差して
明日を信じる力がそこに
煌くように涙はやってくる
激しい感情から遠ざかった私の涙は
青年のような滝のように流れることはないが
美しい世界を憶えておこうと
瞼のふちをあふれるまで
身を乗り出し
遠くを見ているのだ