Nicotto Town



夕暮れ

夕暮れは、紫の血のように空を染めていた。
崩れかけた光が風に震え、胸の奥に音を残す。

幼い頃に見た水死体。
冷たく、美しく、沈んだまま忘れられない。

記憶は使われない香水の瓶。
香りだけが、ふいに胸を刺す。

誰かの笑顔も、今はただの残響だ。

足元で砕けるのは、自分の中の硝子。
夜空へ舞い、星になり、死者のとなる。

儚さだけが、存在を証している。




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