Nicotto Town



・・・

待ち合わせたわけじゃないのに、
その人は、記憶のほうから歩いてきた。

駅の光は、まるで封印を解くようで、
十年前の僕が足元に立っていた。

声はかけられなかった。
まなざしは、今と昔のあいだをすり抜けて、
何も交わらないまま、風だけがふたつの時間を結んでいった。

ポケットのスマホは冷たく、
既読のつかない問いかけが、
氷のように沈んでいた。

あの人の横顔は、遠くの灯台みたいだった。
近づけないのに、なぜか光っていた。

駅は、再会ではなく、
記憶を試すためにある場所なのかもしれない・・・・・・・・




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