Nicotto Town



むきになって






その短い曲が響くと

よく知った自分に巡り会える。

悲しみのように透明な容器になった私に

孤独という液体が静かに注がれていって

まもなく溢れてしまいそうだ。

 

溢れるものは溢れるままにしておけと

まだ、少年の顔を残す私がそこに現われる。

 

美しければ悲しみにも価値があると知ったのはいつの頃だろうか

シューマンは人の感情に名前を付けるのが得意だった。

だから彼はその小曲に「むきになって」と名付けた。

素直でいい子の私は、そう言われるのが嫌いでむきになって悪びれた

ピアノ曲の中に氷が割れるような音を聞いた

それはいい子と言われる子供が感じる張り詰めた孤独感の音かもしれない

黙りこくった静けさの中だからこそ聞こえる心の響き・・・








#日記広場:小説/詩




Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.