名付ける
- カテゴリ:小説/詩
- 2025/07/26 22:39:31
足は自分がどこへ行ったかを憶えていない
ただ歩いたことだけを記憶している
その上に乗っていたのが
何ものであったのかさえ
もうどうでもよくなっている
目的に向かって歩くことは卑しいことだと
足はつぶやく
踊りが高貴なのは行く先を持たぬから
見知らぬ時間がやってきて
振り子に尋ねる
振り子は無言のまま
ただ静かな往復を繰り返し
放たれた永遠の矢であろうとする
永遠に目盛りを刻むことは卑しいことだ
それは時を信じることができない
不完全な者たちの愚かな行為
「言葉よ!」と振り子は言う
「私の名前をいつ知ったのか?
時間も空間も虚ろだとすれば
お前はどのように自らの務めを果たすのか?」
言葉は答える
「次々と失われていくものたちの中にあってこそ
私は名付け続けるだけである!」
言葉は意味で満たされることもなく
音や図形の中に流し込むこともできない
永遠に誕生し続けるもの
言葉に与えられているのは
尽きることなく続く名指しされるものたちの列だけだ