Nicotto Town



名付ける







足は自分がどこへ行ったかを憶えていない

ただ歩いたことだけを記憶している

その上に乗っていたのが

何ものであったのかさえ

もうどうでもよくなっている

目的に向かって歩くことは卑しいことだと

足はつぶやく

踊りが高貴なのは行く先を持たぬから

見知らぬ時間がやってきて

振り子に尋ねる

振り子は無言のまま

ただ静かな往復を繰り返し

放たれた永遠の矢であろうとする

永遠に目盛りを刻むことは卑しいことだ

それは時を信じることができない

不完全な者たちの愚かな行為

「言葉よ!」と振り子は言う

「私の名前をいつ知ったのか?

時間も空間も虚ろだとすれば

お前はどのように自らの務めを果たすのか?」

言葉は答える

「次々と失われていくものたちの中にあってこそ

私は名付け続けるだけである!」

言葉は意味で満たされることもなく

音や図形の中に流し込むこともできない

永遠に誕生し続けるもの

言葉に与えられているのは

尽きることなく続く名指しされるものたちの列だけだ






#日記広場:小説/詩




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