Nicotto Town



おばあちゃんの恋物語







火が空から落ちてきた
炎に町が包まれた
と、おばあちゃんが語る戦争
けれど話したいのは戦争ではなく
おばあちゃんの恋物語

同じことを繰り返すからといって年寄りを馬鹿にしてはいけない
深く刻まれた記憶だから何度でも話す
最近のことはよく忘れているけどね!
繰り返される話を嫌がって
年寄りの話を誰もが聞かなくなった時
戦争が繰り返されるのかもしれない

戦争中でも、恋の花は咲く
もう何回となく聞いた話だが
語れば語るほど磨きがかかってくる
女から想いを打ち明けられない時代というけれど
おばあちゃんは待ち伏せしてちゃっかりプレゼントなんかしたそうだ
しかし、その青年は戦場に行ったきり戻って来なかった

顔なんかまともに見ないまま、お見合いをし、結婚した
その相手と言うのがおじいちゃんのお兄さん

『それが役者さんみたいに男前でねぇ!』
『き、きたぞ!』(パパの兄)

語り始める名調子!
『ちょっと飲みすぎたので先に休みます・・・』 (〃)

『ちょっと、これだけは聞いてから休みなさい。まだ一度も話したことがないんだから! おじいさんのお兄さんはね、丸ごと入った給料袋を持って結婚申し込みに来てね !もちろん、入っていたのは1日だけですよ。でも、男の人が見栄張るって可愛いのね・・・』
(ひとりで思い出し笑いをしている 。
  もうだめだ!みんな寝ることはできない)

『あれ、そんな話一度も聞いたことないなぁ。』 (パパ、次男)
本当はいつも同じストーリーだが 、覚悟さえ決めれば聞くたびに新鮮 !
 
何度でも語り続ける  おばあちゃんは恋の話をしているのにその中に戦争が沁み込んでいる  懐かしそうに語り続けるが、本当は悲しい物語・・・
その時代、それは今から思えばたかだか数十年前の話

戦争と平和、時代と人生、幸福と不幸・・・

子供や孫達の頭を混乱させておきながら
『じゃあ、そろそろ寝るからね!遅くまで起きていてはいけませんよ!』





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