涙の遺伝子
- カテゴリ:日記
- 2025/08/19 00:18:08
涙は、血に刻まれた記憶の雫。
祖母の声の震えが沈み、
父の呑み込んだ叫びが眠り、
それらが夜ごとに水脈のように滲み出す。
しずくは、静かに頬を滑る。
それは過去を解き放ち、
まだ生まれぬ者のまぶたを湿らせる。
この水は、痛みだけでできてはいない。
孤独に芽吹く草のように、
どんな荒れ地にも忍び込み、
胸の奥で音もなく根を張る。
わたしが泣くとき、
その涙は一人のものではなく、
受け渡されてきた証として、
血と塩とともに流れ続ける。
涙は出ないですが、心で泣きます。