Nicotto Town


なるべく気楽に気楽に~!


最期の夜月

第四十一章

不動産へと入るなり肇さんは担当の方と談笑している様に見えたが、とてもいつも通りの明るい笑顔とは程遠い笑みを携えている様にも見えた。彼は直ぐに私が来た事に気付き、「美月さん!おかえり」と声を掛けてくれた。通常とは全く違う笑顔に私は、担当の方に、…「すみません、今迄のお話とこれから話そうとしていた事を私に話して頂けませんか?」とお願いする事にした私だ。…「少し席外しますね」と一言置き、肇さんを連れて車へと向かった。…「肇さん、少しこっちに来て貰える?」と、彼へと声を掛け車の後部座席に乗って貰った。彼自身はきっとこれが「普通」だったのだろう…通常とは思えない程の「笑顔」になっていた彼に、…「肇さん?よーく聞いて?今の肇さんいつもと違う笑顔してるのね?だから、少し此処で休んでて?横になってても大丈夫だから」…「それと、ただいま」と彼へと声を掛けると、…「へへ…美月さん帰って来たぁ…おかえりなさーい」と不自然に笑い、座席へと倒れこむ様にすぅっと眠りへと落ちて行った。…相当疲れただろうな…と私は一先ず、彼に薄手のブランケットを掛け背中を摩ってから、店内へと戻った。これからどの位の時間を掛けて話を聞くかは分からないが、兎に角どんな契約をしたのかを把握する迄にそんなに時間は掛からなかった。一通りの事は把握した私は…「それではその契約でお願いします」と担当の方へと告げ、…「また明日来るので宜しくお願いします」と不動産を後にする事にした。車へと戻った私は彼の寝顔にほんの少しの安堵感を抱きながら、少しでも眠って貰えるようにしよう…とありきたりではあるが、そんな考えになっていた。
…相当、しんどかっただろうな…彼を思うと心が締め付けられる様に傷んだ。私は彼を起こさない様にそっと窓を開け放ち、煙草へと火を点けた。深く深く呼吸を整える様に煙を吸い込み吐き出す。…肇さん、どんな思いだっただろうか…リスカせずにいられた事に少しばかりの安心感を抱きつつ、相当キャパ超えしてただろうに…不動産との契約はしっかり出来ていた。…肇さん、凄いや…とすやすやと眠っている彼を見る様に私は振り返りつつ、彼の寝息を聞きつつ寝顔を見つめて居た。…さて、そろそろ帰ろうかな…と私は煙草を消し、シートベルトをした。ほんの少しだけ遠回りして帰ろう…そう思った私だ。

#日記広場:自作小説

アバター
2025/08/23 14:56
肇さん  お母さんに会えた子供の用に
美月さんに会えて安心したのでしょうね
色々一人で大変だったでしょう
それを見抜いた美月さんもすごいです

不動産との契約 相手がこれしてこれして って言ってくれるからそれをやるだけだけど
それもまたけっこうな量あるんですよね
同じ事を何度も書かないといけないし 面倒(笑)



Copyright © 2025 SMILE-LAB Co., Ltd. All Rights Reserved.